第2章 USJ襲撃事件
それでは、この胸の奥の支えは
切島がアザミを抱きしめ―――…
「ッ!」
そのシーンを鮮明に想像すると、先程とは比べ物にならないような胸の痛みがズキズキと訪れた。
(ち、違う!!切島くんは関係ないっ)
きっと切島が助けたからではなく、何もできなかった自分が不甲斐ないからだ。
(だって僕はもう、あの頃の―――
無個性の僕ではないのだから)
オールマイトに「ヒーローになれる」と言ってもらえたにも関わらず、身近な存在であるアザミを助けることが出来なかった。
(この胸のモヤモヤは、切島くんは関係ない。僕が不甲斐ないからだ…!)
そうだ、そうに違いないと緑谷は自分自身に言い聞かせる。
(そうだ!それしか有り得ないじゃないかッ…!)
この胸の支えの原因がやっと分かり、緑谷は自己完結させ納得する。
しかし、アザミとの重苦しい空気は全く改善されていない。
「「……」」
(アザミちゃんのこと可愛いとか、自分が不甲斐ないとか考えている場合じゃなかった……っ!)
「アザミ、ちゃん!あ、あのっ」
「うん?」
「っ!」
アザミの声音はいつもと大差なく感じるが、やっぱり普段と違いほんの少し元気がない。
そう、声音だけは。
(なんで、僕はすぐに気づかなかったんだろう…っ)
まだアザミちゃんと一度も目が合っていない事に
いつも自分をしっかり見つめ、笑顔を向けてくれるアザミを、緑谷はまだ見ていない。
「アザミちゃん」
「…なに」
うん、この感じはやっぱり…
「アザミちゃん、その……
怒って、る?」
緑谷は意を決してアザミに問う。
ゴクリと喉を鳴らして返答を待つ。
「…怒ってる」
ああああああああ!!!
やっぱりそうだったぁぁぁあぁぁ!!
アザミとは前日から喧嘩をしていて、連絡も無視されていた。
ちなみにアザミと喧嘩をしたことも、こんな扱いをされたことも一度もない。
正直、どうしたら良いかわからない
「そっ、そそそうだよねっ!僕の個性を言わなかったから…!」
「…ちがうよ」
「え?!」
思わぬ返答に緑谷は目を白黒させる。