第2章 USJ襲撃事件
USJ襲撃事件なんてなかったかのように、4人でワイワイと楽しく下校した。
麗日と飯田とは帰宅方面が途中で異なり、緑谷とアザミの2人で肩を並べて夜道を歩いていた。
「「……」」
あ、あれ、なんだろう。
えっと…アザミちゃん、麗日さんと飯田くんが居た時は普通に楽しそうに話してたよね…?!
先程の4人で下校していた賑やかさはどこに行ってしまったのやら。重苦しい空気が緑谷にのしかかり内心冷汗タラタラである。
「デクくん」
「は、はぃい!」
なんだか改まってアザミに名を呼ばれ、ビクゥッと緑谷の背すじが伸びる。
「怪我、大丈夫なの?」
「あ、あぁ!うんっ、もうすっかり!」
ホラこの通り!と緑谷は腕をブンブンと振り回してみせる。
「あ、あのさ!アザミちゃんこそ、大丈夫なの…?!」
「…わたし?」
アザミは何のことかと目をパチクリとさせる。
(か、かわいい…っ!)
そんなアザミの見慣れた姿にさえ緑谷の心は乱される。
(やっぱり今日の僕はどうかしているのかもしれない…っ)
色んな意味でドギマギする心臓を手で押さえつけながら、昼から気になっていた事を尋ねてみる。
「ほらっ、今日の昼休みに、マスコミ騒動で…っ!すごく高く跳び上がったから、着地で怪我しなかったかなって!
………切島くんに、受け止めてもらったって、聞いたけど、」
「!、…あぁ!」
そんなこともあったね、とアザミは手をポンと叩く。
「うん、切島くんに抱き止めて貰えたら大丈夫だったよ」
“切島くんに抱き止めて貰った”
(…と、いうことは)
切島くんはアザミちゃんに触れた
つまり言葉通り
切島くんはアザミちゃんを抱き締めた、という事だ
「そっ……か」
「うん」
緑谷の心はモヤモヤし、胸はツキンと痛む。
それは自分は傍に居たにも関わらず、何もできなかったからか。それともアザミを助けたのは自分ではなく切島だったからなのか。
いや、アザミに対して何もしてあげれなかった事は今に始まった事ではない。
無個性で冴えない自分がアザミにしてあげれたことなんて今まで無かったのだから。