第2章 USJ襲撃事件
ヴィラン連合によるUSJ襲撃は、ヒーロー達と1年A組により勝利を収めた。
時刻は過ぎ、警察の事情聴取も終えUSJ襲撃事件は幕を閉じる。
ヴィランとの戦いで生じた傷が癒えた緑谷は保健室を後にする。
「ありがとうございました」
「気をつけて帰るんじゃよ」
リカバリーガールに治癒してもらえたものの大分時間を費やしため、下校時刻はとうに過ぎた。太陽はとっくに沈み月明かりだけが暗い廊下を僅かに照らす。
「…っ」
緑谷をざわつかせるモノは何か。
ヴィランと対峙した興奮だろうか。
勝利した気の高まりだろうか。
それとも不安だろうか。
緑谷はそれを振り拭うかのように、誰もいない廊下を走り抜ける。
こんな時間だ。当然自分一人だろうと校舎を出れば思いもよらず人影が見えた。
「あ、デクくん!」
緑谷と同じクラスの女子生徒―――麗日お茶子が、真先に緑谷に声をかける。
麗日の後ろには飯田天哉に、そしてまさかのアザミの姿まであるではないか。
「はぁぁ…!」
緑谷は嬉しさのあまり顔を赤らめ感嘆を漏らす。
自分を心配し、こんな遅い時間にも関わらず待っていてくれた友人がいる。
そして会いたくて仕方なかったアザミがいる。
「麗日さん!飯田くん!
――――――アザミちゃんっ!」
「緑谷くん、心配したぞ!」
「元気になってよかったね、デクくん!」
飯田と麗日は緑谷に駆け寄るも、アザミはその場に立ち竦むように身動きをしなかった。
「……」
「、アザミちゃん?」
そうだ、アザミとは喧嘩をしていたと緑谷は思い出す。
アザミの傍に駆け寄るも、深く俯いていて顔が見えない。
「あ、あのっ、僕…!」
「…お疲れさま」
「えっ?」
「お茶子ちゃんと飯田くんから聞いたよ。……大変、だったんだね」
いつものアザミより少し元気がないように感じるものの、口を利いてくれたことに緑谷はホッと胸を撫で下ろす。
「…みんなで、帰ろっか!」
アザミの笑顔に、緑谷は完全に気が抜ける。
「うんっ」
暗がりで視界が悪かったとはいえアザミのなんとも言えぬ笑顔を見抜けなかった緑谷は、浮かれながら麗日、飯田、アザミの4人で帰路に着いた。