第2章 USJ襲撃事件
「よい、しょっと…」
夕暮れ時の日差しが図書室に差し込み、辺りを夕焼け色に染める。日差し避けのカーテンが窓から出入りするそよ風で僅かに揺れた。
図書室の利用者も少なくなった放課後、アザミは図書委員として本日最後の仕事に取りかかっていた。
「これで最後かな…はぁ」
返却された本達を棚に戻し終える。
後は受付カウンターに座り、貸出や返却の手続きがあれば対応するだけ。受付カウンターへ戻ると声をかけられた。
「元気ないんだよねー!どうしたんだい?」
「ミリオ…ううん、ちょっとね」
可愛らしいつぶらな青い瞳の男子が、明るい笑顔で受付カウンターの中心からひょこっと顔だけを出す。
アザミと同じく、本日の図書委員の担当生徒である通形ミリオだ。
「もう、利用者いなくなった?」
彼女がカウンターを覗くと彼は椅子に座っており、鍛え抜かれたムキムキな巨体が見えた。顔の印象と身体がなんともミスマッチだ。
「こんな時間だからね、みんな下校したさ!」
通形はアザミと同じく3年生だが、彼女とは違い経営科ではなくヒーロー科だ。通形は明るく陽気なお調子者で、いつもたくさんの友達に囲まれている。
内気で生真面目な緑谷とはまさに正反対と言えるかもしれない。
「今日の仕事はおしまいだねー」
「そうなんだよねー!
だから、俺とお喋りしても平気なんだよね!」
通形は自身が座っていないもう一つの受付係の椅子を引き、クッション部分をパシパシと叩きながら「担当時間が終わるまで、座って話そうよ!」とアザミに着席を促す。
「…しょうがないから、ミリオに付き合ってあげる」
「ヤッター!」
両手をあげて嬉しそうにする通形に促されるまま、アザミはぽつりぽつりと話しだす。
「…ヒーロー科って、凄いなって思ったの」
「ウンウン!」
アザミは緑谷と爆豪の姿を思い浮かべる。
「1年生にね、幼馴染がいるの。
まだ入学したばかりなのに。先輩の私なんかより、遥か彼方にいて…」
「…うんうん」
緑谷と爆豪と同じクラスの切島や上鳴も、きっと凄い新入生なんだろう。
また、マスコミ騒動でパニックを納めた非常口の標識になっていた男子生徒も、おそらくヒーロー科だろう。