第2章 USJ襲撃事件
「私なんて、ダメダメでさ。
分かってたけど、全然、頑張れていないなって。情けなく、なっちゃって」
「……」
「…ミリオ?」
いつも大袈裟に反応を示してくれる通形だから「そんなことないさ!」と明るく笑い飛ばしてくれるかと思いきや、彼は無反応で黙り込む。アザミの問いかけにすら応えない。
「ごめんね、面白い話じゃなくて…
いたっ」
通形は人差し指でアザミの額をトンッと突く。
「痛っ、いたたたた!?」
「アハハ、そうだよねー!痛いと思うんだよねー!」
通形は手を止めることなくトトトトトーッとアザミの額に連打する。
「ちょ!ミリオ、やめ…っ!」
「君が」
「?、なに!?」
やっと通形の手が止まり、アザミは涙目になりながら「加減してよね、全く…」と額を擦る。
「アザミが足掻いてきたとこを、俺は見てきた!今も足掻いていることを知ってる!
だからアザミを悪く言う奴は許さない!
例えそれが君自身であってもね!」
「ミリオ…」
通形が、怒っている
俯いていた顔を上げ通形を見れば、つぶらで可愛らしい青い瞳と目が合う。しかし、その瞳の奥はバチバチと怒りの炎が燃えているように感じた。
「…っ」
彼の熱い真っ直ぐな視線に耐えられず、アザミはふいっと視線を逸らした。
「今の俺がいるのは、アザミのおかげなんだよね」
通形の予想外の言葉に驚き過ぎて、アザミは目を丸くする。そんな勿体ない言葉を真に受けるわけにはいかず、彼女は自嘲気味に笑った。
「……嘘ばっかり。雄英のビッグ3が、何言ってるの」
“雄英のビッグ3”
雄英高校のトップに君臨する、3人の生徒である。彼らは高校生でありながら、並みのプロヒーローを遥かに凌ぐ実力を持っている。
「それに、プロも含めて最もNo.1に近いって言われるオトコに、言われてもね」
「ビリッけつまで落っこちた俺を持ち上げてくれたのは、君じゃないか」
「ちがうよ、それはミリオが頑張ったからだよ」
「俺は底まで落ちた、服も落ちた!…拾ってくれたのは君だけだったよ
だから、アザミが落ちた時は俺が持ち上げる!」
アザミと通形は、自分達が1学年の時を思い出していた。