第2章 USJ襲撃事件
「そ!私、ここでバイトしてて!社割のヤツ!雄英高校から近くだよ」
その割引券をよく見ると普段見かけるようなクーポンではなく、アルバイト名が記載されており“猫柳アザミ”と印刷されていた。
「お!50%OFFになるじゃん!」
「いいんスか?俺ら貰っちゃって」
「いいのいいの!使って!
今日のお礼…なんて、ね。こんなのでごめんね
今日はありがとうっ!」
目を細め、いたずらっぽくニッと笑うアザミに、切島と上鳴は思わず頬を赤らめた。
「…い、いえッ!」
「え、俺が誘ったのは、そーじゃなくて…!」
―――キーンコーン カーンコーン…
「あ、チャイム鳴ったね!」
学校のチャイムの音が響き渡る。
アザミは1人すくっと立ち上がりスカートについたホコリを払う。
「こんな時間になっちゃったね!混雑も収まったし、またね!」
アザミは「3年の教室、ここから遠くって」と駆け出した。
「アザミさん!」
「アザミ姐さん!」
切島と上鳴の声にアザミは振り向くも「お金、ちゃんと返すからー!」と手を振り、あっという間に非常階段を駆け下り去ってしまった。
*
マスコミ騒動が落ち着き、生徒達は皆教室に戻ることができた。
また、先生達のマスコミへの対応も無事終わり、午後の授業が始まった。
「これより、飯田天哉が1のAの学級委員長の責務を全うします!
では、本日のホームルームは他の委員決めを行いたいと思います!」
委員長は緑谷から飯田に変わり、着々と委員決めが進んで行く。
副委員長の八百万百が黒板に委員名を書き出していくのを、切島はぼんやりと眺めていた。
(なんか、呆気なかったな…)
切島はまだマスコミ騒動の…ではなく、アザミと出会った余韻が抜けていなかった。
(…アザミさんと、また会えるといいな、なんて)
アザミと居た時間は数十分の事だったが、マスコミ騒動に巻き込まれ怒涛の時間だった。
長かったような、短かったような、不思議な感覚だ。
(きっと、また会えるだろうな。緑谷と爆豪の幼馴染だし)
切島はチラリと緑谷と爆豪を見る。
(幼馴染、か…)
緑谷と爆豪の話をするアザミの姿を思い出す。