第2章 USJ襲撃事件
「…アザミさん、で」
先程の元気な切島は何処へ行ってしまったのやら。小さな声でポツリと呟く。
「――ッ」
名前一つ呼ぶだけなのに、照れた様子の切島にアザミは不意を突かれた。
一見不良に見えなくもないが、実は真面目で男気溢れる男子生徒―――そんな切島の照れる姿がちょっと可愛くて、そして不思議なことに格好良く見えた。
アザミは飲みかけの缶ジュースを落としそうになり、正気に戻る。
「…あ、う、うんうん!その方がいいかもしれない!」
“先輩と呼ぶな”と自分で言っておきながら、さん付け以外の呼び方なんてある訳がない事に今更ながら気づく。
「…うん!それでお願いっ」
「了解ッス、アザミさん!」
「ちょ、ねェ!!俺の事忘れないで?!」
そんなつもりはないが、置いてけぼりを食らった上鳴はへそを曲げ口を尖らせる。
「なぁーんか、先輩って緑谷と爆豪の“お姉さん”って感じするんスよねー」
幼馴染だからスかね?と、上鳴はジュースで喉を潤しながらアザミに問う。
「…ううん。ほんと、そんなんじゃないよ」
そうと思っていたのは私だけだったけど、とアザミは心の中で呟いた。
「お姉さん……姉さん……………姐さん……
!、……アザミ姐さん、で!!」
「…ね、姐さん??」
「上鳴ッ、お前なぁ!?」
「そ!アザミ姐さんで!!いーじゃん!俺めっちゃセンス良くねェー?!」
「…ねえ、上鳴くん。ネエサンの響きなんか違くない?」
「いやいや、いーんすよコレで!ね、アザミ姐さん!」
「えー?!」
「と、言うわけで!アザミ姐さん、今度お茶しましょ?」
上鳴は親指を立てながらめげずに再度お誘いするも、
「いいよ」
「そっすよね、やっぱダメ………
え!?マジで?!!」
「な"…っ!おい上鳴っ!」
「はい、コレ」
驚く二人の手の平に、アザミは紙を握らせた。二人はそれを見て目を白黒させる。
「「ファミレスの、割引券?」」