第1章 《 》の幼馴染
僕は雄英高校ヒーロー科、1年A組
―――緑谷出久。
僕には幼馴染がいる。
―――え?
…か、かっちゃんね。
そうだけど、違うよ。
かっちゃんと、もうひとり―――――
「デクくーん!一緒に帰ろー!」
「…わっ、アザミちゃん!う、うんっ、ちょっと待ってて!」
他クラスにも関わらず1-Aと書かれた巨大な教室の扉をスパァンッと躊躇なく開け放ち、僕のあだ名――蔑称を明るい声で呼ぶ彼女は、猫柳 アザミ。
僕の幼馴染だ
「あ、かっちゃん!かっちゃんも私とデクくんと一緒に帰る?!」
「あ"ぁ?!誰がテメェ等と一緒に帰っかよ!」
「えぇ!?待ってよー!」
ウッセェーわ!!!と、かっちゃんはアザミちゃんを怒鳴りつけて教室を出て行こうとする。
――そう、アザミちゃんはかっちゃんの幼馴染でもある。
(かっちゃんに怒鳴られても、今も怯まないなんて……流石、アザミちゃんだ)
僕なら萎縮してしまうのに
僕ら3人は幼稚園、小学校、中学校そして雄英高校と続き、ずっと同じ学校だ。
だけど、少し違うのは…
「っつーか、テメェは3年のくせに1年の教室に来てんじゃねぇよ」
そう。アザミちゃんは僕等より2つ上の学年で、3年生だ。
「いーじゃん別に!中学の時だってそうだったでしょ?」
「ッ…覚えてねーわ、バァカ!!!」
フンッとかっちゃんは鼻を鳴らし僕を睨みつけ(なんで僕…?)、教室の扉を力任せに開け放ち、今度こそ出て行ってしまった。
「もー、かっちゃんってば…デクくん!かっちゃんにイジメられてない?!」
「う、うんっ 大丈夫だよっ」
「本当?良かった…!」
安心したようにホッと胸を撫で下ろすアザミちゃん。
アザミちゃんはお姉さん的存在の幼馴染だ。
かっちゃんからイジメられている僕をいつも庇ってくれていた。
僕とかっちゃんは仲良くないけれど、アザミちゃんは僕達それぞれとは…かっちゃんとも、仲良しだったり、する。
何故かモヤモヤと、心にうす暗い雲がかかる。