第2章 USJ襲撃事件
「大丈夫だよ。混雑しててエレベーターは乗れないし、階段もまだ人が多すぎて進めないし…落ち着くの、待とう?」
「ウェーイ!先輩の腹の音も、落ち着くの待ちまショー!」
「ぐっ…!!上鳴くん、それは余計…っ!!」
アザミ、切島、そして途中でたまたま合流した上鳴電気(切島のクラスメート)の3人で人気の無い屋外の非常階段にて缶ジュースを飲む。
昼食を食べ損ねたアザミの腹は先程からグーグー鳴りっぱなしであった。
「しょーがないっスよ!先輩、昼メシ食えなかったんスから!」
「うぅ…!切島くんには助けてもらったのに、ジュースまで奢ってもらっちゃって…」
「いいんスよ!先輩が頑張ってくれたから飯田が気づいて、パニックが収まったんですから!」
切島はしょげるアザミに「むしろ先輩のおかげッス!あざす!」と力強く鼓舞する。
「いや、私何もしてないしっ!先輩なのになぁ…お財布落としちゃうし、面目ない…!」
その鼓舞は嬉しさ反面、また、先輩としての立場の無さに恥ずかしさもある。
「そーいや!
緑谷と爆豪の先輩って、名前なんてゆーんすか?」
空気を変えるよう、上鳴が明るく話題を振る。
見た目はチャラそうだが、気遣いのできる優しい心の持ち主のようだ。
上鳴は稲妻模様のメッシュの入った金髪で、釣り目で眉の薄い顔のチャラ系男子生徒だ。ノリが軽くチャラいが、彼もまた切島と同様に明るい性格で皆を盛り上げるムードメーカー的存在だ。
「上鳴くんも私の事を“緑谷と爆豪の…”って言うのね」
「いや〜教室で先輩、めちゃ目立ってたんで!」
そしてすかさず「今度お茶でもしまセン?」とアザミを誘う。
切島とアザミは「この場所、人居なくて良いっスねー」「穴場なんだよ〜」と上鳴をスルーした。
「ちょ、二人とも俺の話聞いてる??俺泣いちゃう!」
「…猫柳アザミ、だよ
やっぱ、先輩って呼ばなくていいよ」
色々と醜態を晒しすぎて、今更そう呼ばれるのは気恥ずかしい。
二人に“先輩”として慕われるのも、なんか……なんか、違う気がする。
アザミがそんなことを考えていると、遠慮がちな霧島の声が聞こえた。
「じゃあ…………
――――――――アザミ、さん」