第2章 USJ襲撃事件
「アザミちゃん…ッ!!!」
緑谷の切羽詰った声がアザミの耳に届く。只事では済まないであろう事が想像でき、落下の痛みを覚悟した―――
ガシッ
「ッぶねー!」
「切島くんっ…!」
生徒達のパニックでごった返している状況下で、切島が見事にアザミを抱きとめた。
「大丈夫スか?!」
「うんっ、ありがと…!!」
「良かった…うぉっ」
人波に流されぬようその場に踏ん張っていた切島だが、安心から気が緩みとうとう流され始めてしまう。
「みなさーん!ストップー!…うぉぉっ?!」
「わっ!」
切島はアザミを抱き抱えながら声を張り上げるも更に人波へのまれていく。
「ど、どうしよ…っ!」
私がした事は無駄だったの…ッ?
アザミは為す術もなく狼狽していると、
「エンジン、ブースト!!」
アザミの声に気づいた眼鏡の男子生徒がそう叫び、自分自身を車輪のように物凄いスピードで宙を回転していった。
(あ!眼鏡の…っ?!)
あまりにも一瞬の出来事で、アザミは目を奪われた。
「みなさん!!!
ダイジョーーーーーブッ!!!!!!」
物凄い勢いで壁に激突したかと思えば非常口の標識の上に立ち、非常口の標識のようなポージングを取る眼鏡の男子生徒。
異様な光景でズギャーーーンッと効果音が聞こえてきそうだ。そして彼はよく響き渡る声で皆に告げた。
「ただのマスコミです!!何もパニックになる必要はありません!!!ダイジョーーーブ!!!!」
(良かった…)
「ここは雄英!!最高峰に相応しい行動を取りましょう!!」
(リーダーシップを取れる人に、私の声が届いた…
私のした事は、無駄じゃなかった)
切島や他の生徒達はパニックが収まった事に胸を撫で下ろしたが、アザミだけ違う意味で胸を撫で下ろした。
*
「…俺達、教室に戻んなくていいんスかね」