第2章 USJ襲撃事件
「もうっ!来れないなら来れないって、せめてひと言連絡してくれればいいのに…っ」
10分弱で終わるはずの仕事が、昼休みの時間を半分程消費してしまった。
ドサドサッ
「あ、やっちゃった……もぉーっ!」
やるのではないかと思っていたが、やはりやってしまった。抱えている印刷物の山は上の方が不安定になっていたため、いくつかアザミの足元に落下した。
(しゃがんで取るの面倒臭いなぁ。でもあとで拾いに来るのはもっと面倒臭いし…ッ)
大きな書類の山を抱えているため、視線を落として落下物を視界に入れることすら出来ない。見当で手探りしていると、ひょいっと誰かが拾い上げてくれた。
「大丈夫か?」
「わっ、ありがと………う」
顔を上げると、まず目に飛び込んできたのは真っ赤。そこには赤髪の強面そうな男子がいた。
「…あ"?」
「ヒェッ」
髪の毛を逆立てたスパイキーヘアをしており、牙のようなギザギザの歯がチラリと見える。右目の上には切り傷があり……ヤンチャ、な人、なのだろうか…?
「―――アンタ、」
「ご、ごめんなさ…っ」
アザミは思わずビクッと体を震わせる―――
「やっぱり、緑谷と爆豪の!」
「えっ…!?」
先程考え事をしていた幼馴染達の名前が聞こえ、アザミは過剰に反応する。
「1のAに来てたッスよね?」
「え、えっと、うん」
この人、1年生だったのか!
よく見れば制服も真新しく、まだ着慣れてなさそうだった。
「俺、緑谷や爆豪と同じクラスの切島ッス!切島鋭児郎!
……アザミ、先輩、ですよね?」
「う、うんっ、なんで…」
私の名前、知ってるの?とアザミが問う前に「緑谷がそう呼んでたの、聞こえたんで!」と、太陽のような笑顔で答えながら拾った印刷物をアザミが抱えている山の上に乗せた。
「!、ありがとう…!」
「それにしても、流石に持ち過ぎ」
「え?、わっ!」
そう言うと切島は彼女が抱える印刷物の山の半分…いや、3分の2ほどひょいっと取り上げる。
「少し持ちます!」
「わ、悪いよ!資料室まで遠いし…!」
「んじゃ尚更スわ。俺、ヒーロー志望なんで。こーゆーの放って置けないっつーか!」
「あ…ありがとうっ」
二人は印刷物を抱え並んで歩き出した。