第2章 USJ襲撃事件
「はあああ…」
アザミはひとり盛大に溜息をつく。
(…何がショックだったって、)
デクくんは無個性じゃなかった事とか。
ずっと隠されていた事にも、何も言ってくれなかった事にも凹んでいる。
かっちゃんに関しては、何も言ってあげれなかった事。あんなかっちゃんは見たことないし、見られたくなかったろうに。
私の心境を汲んでくれたのだろう、一緒に帰宅してくれた。
(何が“お姉さん風の私”、だよ…)
二人はずっと先を見据え、私ひとり仕様もない事で足ぶみしている事実に打ち拉がれた。
(恥ずかしいな、私…)
もがいているのに、努力を怠っている訳ではないのに。
私だけ二人のようなはっきりとした成りたいイメージも、理想もない。
そんな私が二人に雄英高校の先輩ぶってみたりなんかして。
(ホント、合わす顔ないな…)
何よりデクくんに酷い事をしてしまった。
あんなのただの八つ当たりでしかない。
(…どうすればいいかなんて、分かってる)
私が一言、デクくんに「ごめんね」って謝らなければならない。
優しいデクくんは「大丈夫だよ」ってきっと言ってくれる。
だけど、もしも拒否されたら?
デクくんに「僕がどうしてアザミちゃんに個性を打ち明けなければいけなかったの?」なんて、言われたら?
かっちゃんにまで「テメェなんか用無しだわ、幼馴染でもなんでもねェ」とか、言われたら?
もし、そんな事を言われたら。
アンバランスだけどようやく積み上げてきたモノが呆気なく崩れ落ちてしまいそうで、怖くて二人に会えない。
(私って、こんなに臆病だったんだ…)
「……よいっ、しょっと」
図書委員の仕事も、この印刷物の山を資料室まで運び終えればひとまず終わりだ。
(うん。二人分の仕事だけど余裕で運べる)
自分の逞しさに少し虚しくなる。
可愛い女子だったら「きゃっ!重い〜☆」とか言ったら、誰か助けてくれただろうか。
(どんどん卑屈になるなぁ、私…)
図書委員の仕事は担当制になっており生徒二人で行うのが通常だが、アザミと担当になったもう1人の生徒が何時になっても現れずにいた。