第2章 USJ襲撃事件
『デクくん…? かっちゃん…?』
アザミの呟きのような、か細い声が妙にその場に響き渡った。
緑谷出久と爆豪勝己は校門前で立保受けしていたアザミの存在に気づく。
『アザミちゃん…?!』
『チッ…帰ンぞ』
『あ…あの!僕…ッ』
緑谷はあたふたと何か言いかけるもそれ以上言葉が思いつかないのか、開きかけた口を閉ざす。
(言い訳もしてくれないの…?)
アザミはそんな緑谷に苛立ちを感じた。
『ずっと…教えて、くれなかったの?』
『そっ、そんなんじゃ、なくて…!』
『…嘘つき』
『―――ち、ちがっ』
『嘘つきッ』
アザミは緑谷の顔を見ず通り過ぎ、涙を滲ます爆豪の後ろに続き歩き出した。
(…違う。本当はこんな事、言いたいんじゃない)
こんなの、自分の不甲斐なさをデクくんにぶつけているだけだ。
デクくんとかっちゃんを1番理解しているのは自分だと思い込んでいた。
しかし、二人は私のことなんか眼中になく遥か高みを目指していた。私の知っている幼馴染なんて居なかった。
とんでもない思い上がりに、恥ずかしくて死にそうだ。
『アザミちゃん…っ!』
アザミが緑谷の声を無視するなんて、初めてではなかろうか。
(二人のこと…デクくんの個性の事も、知らなかったなんて…
……あんなに一緒に居たのにな)
大きな目標を掲げている二人を応援してあげたいのに。
わかっているのに、出来ない。
頭では理解しているのに、勝手に卑屈になって情けなくなって。思考とはちぐはぐな言動をして―――本当に何をしているんだろう。
アザミは唇をきゅっと噛み締めた。
* * *
(…どうしよう)
どんなに明日を望んでいなくても必ず太陽は昇る。そして時間はあっという間に流れ気づけばお昼休みになっていた。
アザミは昼食を取る気分にもなれず、自身が所属している図書委員会の仕事を黙々とこなす。
アザミは緑谷と爆豪の二人に合わす顔がなく途方に暮れていた。
緑谷からは携帯にメールが来ているものの既読スルーをしている。(ごめんね、デクくん)