第1章 《 》の幼馴染
(そう言えば、オールマイトの戦闘訓練の授業って言ってたな…)
授業、長引いたのかな
どんな訓練だったんだろう
待ってる間に英単語帳を眺めるも、全然頭に入ってこない。
良い大学や就職先を狙うならスキマ時間も惜しんで勉強しなさいって、先生達は口酸っぱく言う。
こんなに勉強するのは今だけだからって。
(全く、その通りだと思うけど…)
まるで私達学生は息抜きばかりしてるみたいな言い方で、「息抜きは夕飯、お風呂、睡眠で十分でしょう」って。
(…無理に、決まってるじゃん)
まだ見えない未来のために、そこまでして頑張れる原動力なんてない。
毎日同じ時間に起きて、同じ制服を着て、同じように登校して帰宅する。
面白味のない同じ日々のくせに、そこに学生カーストは確かに存在して、友達だけど皆ライバルで。あの子は頭が良いとかすごく可愛いとか格好いいとか。比較し比較され劣等感まみれになって。
(息が詰まる…)
勉強を頑張ることも
頑張らないでサボることも
「苦しい、なあ」
思わずポツリと独り言が溢れる。
世界を赤く染める美しい夕焼けを見ても素直に綺麗と思えない。
むしろ今日の終わりを告げられ「今日の私は何を成した?」と後悔ばかりさせられる。
キライだ
夕焼けなんて キライ
(…違う)
1番キライなのは、私自身だ
「もー、今日はいいや…」
手にしていた英単語帳は、傍から見れば勉強している風に見えるだけのお飾りになってしまっていた。
「いや、今日“も”の間違いかな…」なんて思いながら通学カバンにそれを仕舞い込んでいると、足音と声が聞こえてきた。
あっ、この声は…
(かっちゃん、と……――デクくんだ!)
幼馴染達の気配を感じた途端、沈んでいた気分も自然と上がる。
辛気臭い顔なんてやめやめっ!
いつものお姉さん風な私で居たいもん!
なんとなく身なりを整え、校門の陰から元気に飛び出した。
「かっちゃん!デクく…ん………?」
しかし、そこに居たのは私の知らない幼馴染達―――ううん、見たことも感じたこともない空気を纏った幼馴染達だった。
私は二人に声をかけかけたが、私の存在に気づきもしない。