第1章 《 》の幼馴染
「…これだけは、君には言わなきゃいけないと思って…」
(デクくん…っ!)
デクくんは新品のヒーロースーツを着用しているはずなのに既にボロボロだ。デクくん自身も腕やあちこち怪我していて、ボロボロだった。
「僕の個性は、人から授かったものなんだ。
…誰かからは絶対に言えないっ、言わない!」
―――――デクくんの、“個性”?
え、だってデクくんは、無個性じゃ…
デクくんもかっちゃんも、私の存在に気づかないまま会話を続けていた。
私はただならぬ雰囲気に身動きが取れず、立保受けしていた。
「コミックみたいな話だけど、本当で…
いつか…この個性をちゃんと自分のものにして、僕の力で君を超えるよ!」
泣き虫のデクくんが、ずっと憧れていたかっちゃんに力強く宣戦布告する。
そこにはいつもイジメられて泣いていたデクくんの姿はなかった。
そして、私はかっちゃんの言葉に耳を疑った。
「…俺は、テメェに負けた…そんだけだろが……
そんだけッッ…―――!!!!!」
あのかっちゃんが、負けた?
しかも、デクくんに…?!
「氷のヤツ見て…敵わなねェんじゃって、思っちまった…ッ!!
クソォ…ッ!!ポニーテールのヤツの言う事に、納得しちまった…ッ!!!」
クソ、クソォッ!!と拳を震わせ、見たこともない程悔しがるかっちゃんがいた。
「俺はァ!!こっから強くなってやる!!ここで一番になってやる!!」
乱暴者のかっちゃんがいつもイジメていたデクくんに、泣きながら決意表明する。
「…俺に勝つなんて、二度とねェからな、クソがァ」
かっちゃんの導火線に火が付き、淡々と闘志を燃やす。そこにはいつも同級生を見下すかっちゃんの姿はなかった。
「デクくん…? かっちゃん…?」
そこに、私の知っている幼馴染はいなかった。
私はやっと気づいた
二人は私なんてとっくに眼中になくて
―――ずっとずっと先の高みを目指していた事に。
《第1章 《 》の幼馴染》 終