第6章 体育祭、それぞれの想い
「よしっ!天喰くんいくよっ」
「…」
「天喰くん?」
「あ、嗚呼…」
ほんの少しだけ、猫柳さんと騎馬を組んだことを後悔した。
さっきから猫柳さんが沢山話しかけてくれるものの、俺は全然返事が出来ないでいる。周囲の視線が辛い!皆が俺…というより、猫柳さんを見ている……っ!
「なあ。天喰と…経営科のやつ?のアレ、騎馬っていうのか?」
「いや、言わないっしょ。まあ、ルール上は騎馬なんだろうけどよ」
びくっ
思わず肩が跳ねる。自分達の事を言われていると思うと逃げ出したい。本当に、もう無理だ…っ!!
「いざ!尋常にっ!!勝負〜〜!!」
「……猫柳さんっ、頼むから静かにしてくれ…っ!」
「ねぇ、不思議!天喰くんの肩に猫のアザミちゃんが乗ってるの!かわいいー!」
そう、波動さんの言う通り。俺の肩には猫の姿の猫柳さんが乗って、しかも、その姿で話しかけてくる。目立たないわけがない…!!
「天喰くんはさ!私だけを見てて?」
「?…」
「作戦通り!って、言う程の作戦じゃないんだけども。私がポイント取ってくるね!」
「任せて!」と彼女はニコニコと笑顔で声を弾ませる。
彼女の柔らかい表情に、楽しそうな声に。騙されるところだった。
彼女の足の震えが、肩越しに僅かに伝わってくる。嗚呼、緊張しているのは。不安なのは。俺だけじゃないんだ。
「皆さん!そろそろ15分経ちますよ!」
《さァ上げてけ閧の声!!
血で血を洗う雄英の合戦が今!!
狼煙を上げる!!!!》
13号先生とプレゼント・マイクの声が再び会場に響き渡る。
「猫柳さん、安心して」
「え?」
「落とすなんて、絶対にしない。
―――――――俺が、君を守り抜く」
さあ、第2回戦の開幕だ。