第6章 体育祭、それぞれの想い
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「私と二人でチーム組もうよ!」
猫柳さんが突然俺に声をかけてきた。
「ッ?!!」
吃驚しすぎて声が出なかった。
何故なら猫柳さんはミリオとチームを組むと思っていたから。ましてや俺と二人でなんて…っ
「私とチーム……ううん、私を騎馬に乗せて!」
猫柳さんは笑顔で作戦を話し出す。
「この案なら、きっと他のチームにだって負けないよ!」
いつもの猫柳さんに見えるけど、違う。瞳の奥が不安そうに僅かに揺れている。俺に断られると思っているんだろうか?そんなことする訳ないのに。
「天喰くんの邪魔、しないから…「いいよ」
セリフの最後の方はとても自信なさ気に言う猫柳さんを見ていられなかった。俺は慌てて初めて返事をする。
「あ…!天喰くん、ありがとう!!!」
目を輝かせて嬉しそうにする猫柳さん。「あ〜〜よかった!!」と安心した様子で胸を撫で下ろす。
ヒーロー科ばかりで、唯一の経営科は猫柳さんしかいない(サポート科もいるが、彼等は毎年数名勝ち残っている)この状況だ。きっと勇気を振り絞って声をかけてきてくれたんだろう。
(俺の方こそ、感謝だよ)
そんなことを言える訳もなく、「あぁ」と素っ気なく返事をしてしまった。
(ミリオ、ごめん)
本来なら、猫柳さんと騎馬を組むのはミリオの役目だと思う。「ミリオと組むべきだ」と、猫柳さんに言うことができなかった。
――――誰かに譲るなんて、出来なかった。
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