第6章 体育祭、それぞれの想い
「ミリオがね、いつも天喰くんの話をするの!
天喰くんは凄い才能を持ってて、とっても明るくて楽しい人だって!」
「凄い…?」
猫柳さんの言葉に思わずパッと顔を上げる。彼女の言葉に、笑顔に、釘付けになってしまった。
「そう!それに、天喰くんって優しいよね」
この間、窓から舞い込んできた蝶を逃がしてあげてるとこ見かけたんだ、と。
「私と、友達になってくれない?」
普通、「友達になって欲しい」なんて言わない。言われたこともない。そんな恥ずかしい台詞、俺は絶対口に出来ない。
言った張本人も少し照れた様子で「改めて言うと恥ずかしいね!」と言って顔を周りを手でパタパタと仰いでいる。
彼女の姿にふわっと笑う柔らかい空気に、緊張が解されていく。
嗚呼、似てるんだ。
猫柳さんとミリオは。
笑顔がとても眩しくて、持ち前の明るさは周りをも照らす太陽のようだ。
だからグイグイ来られても少しも嫌な気がしない。
だから、ミリオと同じように。
猫柳さんから目が離せないんだ。
「天喰くん」
「う、うん…?!」
そう思った直後なのに、俺は思いっきり首をブンッと回して猫柳さんから目を逸らしてしまった。
「まずは私とお喋り、してくれないかな」
「……お、
俺で、よければ…」
「……」
「…猫柳、さん?」
「ふふ、やったあ!!」
猫柳さんは俺の何の捻りも、面白くもない返事に、とても嬉しそうに笑う。
ミリオが「ねえ、俺のこと忘れてないかい?忘れてるよねー!」と騒いでいるが耳に入ってこなかった。
(耳が、熱い)
ミリオが好きな人を、好きにならない訳なんて無かったんだ。
本当に、見ているだけで良かったんだ。
だから、ずっと見てきたんだ。
猫柳さんが人知れず頑張ってきたとこを。
だから、それを馬鹿にするなんて
俺は許さない
見ているだけで良かった。
見ているだけのつもりだった。
「そんな訳ないだろ」
緊張しいの俺が人の目も気にならない程。いや、そんな思考にたどり着くよりも早く、俺の口から勝手に言葉が飛び出した。
* * *