第6章 体育祭、それぞれの想い
* * *
―――初めて君と話したのは、高校一年の春。
「環〜!聞いてくれよ!
アザミが面白いこと言ってたんだよね!」
「へぇ」
「確かに面白かったんだよね!環もそう思うだろ?思うよねー!」
ミリオは彼女……猫柳さん、と、仲が良い。
ミリオとは小学3年生からの付き合いだ。大抵の事は知っていると思っていたが、俺の知らぬ間にミリオは猫柳さんと親しくなっていた。
彼女は自分たちと接点がないと言っても過言ではない、経営科の人だ。
「あ、いた!ミリオ〜!!」
ミリオと教室で話していたら猫柳さんが自分たちの教室(ちなみにミリオは隣のクラス)に何の躊躇いもなくずんずんと入ってきた。
…他のクラス、ましてや他科のクラスに入るなんて、俺には無理だ…っ!
しかも猫柳さんは波動さんや他の人にも挨拶や軽い談笑してる。
俺には到底出来ない。波動さん曰く、俺はノミの心臓……
「今日は図書委員の担当でしょ?!」
「あっ、忘れてた!」
「次はちゃんと仕事してよねー?!」
俺が尊敬してやまないミリオが「アザミは凄い!」って言うんだから、そうなんだろう。
そんなミリオは猫柳さんに両手を合わせて平謝りしている。
猫柳さんと一緒にいるミリオはとても楽しそうだ。ミリオを見てれば分かる。きっと、ミリオは………
「天喰くんも一緒に食べない?」
「へぁっ!?」
突然猫柳さんに名前を呼ばれ、俺は変な声を出し椅子から飛び跳ねてしまった。
まさか自分に声を掛けられるなんて思いもしなかったから…!!
「お菓子をね、いっぱい貰ったの!天喰くんもどうかなって……」
「おっ…俺はいい、よ」
まだ自分のクラスにも馴染めていないのに、ましてや他のクラスの人と交流なんてハードルが高すぎる。緊張してどうにかなってしまいそうだ。本当に、俺には構わないでくれ…!
「……ごめんね、口実作って話しかけて。ちょっと狡かったね」
「え?」
「私ね…ずっと、天喰くんと話してみたかったの!」
「?!!な、なんで、俺なんか…!」