第6章 体育祭、それぞれの想い
「色々、怖かったね。もう大丈夫!」
「う…!ぐず…っ」
「うんうん、よく頑張ったね」
「私、自分の個性がきらい…っ、すごく、怖いの…!」
アザミは自分の手を見つめる。特にこの爪が鋭く伸びる時がいちばん怖い…!と。
また人を傷つけてしまうのではないか?怖がられるのではないか?気持ち悪がられるのではないか?と。
切羽詰まった気持ちが一気に溢れ出てしまった。
「…確かに、個性をコントロールできないと。危ないかもね」
「っ」
ヒーローは泣きそうになるアザミの手を取り、大きな両手で包む。触れたヒーローの手の温かさにアザミは安諸した。
「けどね、しっかり個性が使えるようになれば。この個性は誰かを守ることだって出来るよ」
「だれかを、まもる…?」
「そうさ!個性をコントロールできるようになったら運動神経を抜群にも出来るだろうし、誰かの役にだって立てる!」
「だれかの、やくに…?」
衝撃的だった。
この個性が誰かを守り、役に立つことができるだなんて。気持ち悪がられ、人を傷つけるだけの個性だと思っていたから。
「そうだよ!私の個性は超再生だけど、皆より少し無茶できるくらいさ…
だから、君の個性は色んな可能性を秘めた素敵な個性だ!」
ヒーローの笑顔が、太陽のように暖かく眩しい。きらきらと眩い光をはなつ。
ああ、大きくなったらこの人みたいなヒーローになりたい。誰かの役に立てるのなら、この人の役に立ちたい。己の個性が怖いと涙を溜めていたアザミの瞳は、今は憧れと夢で満ち溢れていた。
「……大きくなったらヒーローになって、あなたのサイドキックになりたい!」
「えぇ?!私のサイドキックにかい?嬉しいなあ、ありがとう!」
“ありがとう”
ヒーローから貰えたその言葉に、アザミの胸は嬉しさでいっぱいになる。どきどきと胸の鼓動が鳴りっぱなしで、どうにかなってしまいそうだ。
この“好き”で溢れる想いを表現しきれない。それはまるでまだ知らぬ初恋のような、ほんの少し甘酸っぱく切ない、そんな気持ち。
「ヒーロー、たすけてくれてありがとう…!」
早く大きくなりたい。
大人になって、ヒーローになって、大好きなこの人のために何かしたい…!