第6章 体育祭、それぞれの想い
「やーい、化け物〜!」
公園で爆豪や緑谷を待っていると、ちょっかいを出してくる同じ幼稚園の男子達が現れた。
「ち、ちがうもん!お医者さんに、個性が“猫”って…」
「じゃあ化け猫だー!」
「だって見ろよ、お前の手!」
アザミをからかう男子の一人が彼女の腕を掴んだ。
彼女の手は人間の手ではなく、毛で覆われた猫の手になっていた。掌には桃色の肉球まで現れている。
「や、やめてよっ」
「うわっ!腕にも毛が生えてきた!」
「気持ち悪ィー!」
アザミは個性を収めようとするも、気持ちばかりどんどん焦っていく。焦れば焦るほど元より制御できない個性が更に乱れていった。
「はなしてよっ」
一刻も早く人気のない場所へ行きたい。
ここに居れば居るほど、自分の嫌な姿を晒すだけになるのは目に見えていた。
恥ずかしい
こんな姿、誰にも見られたくないっ…!
嫌がるアザミを無視し、男子達はアザミをからかい面白がるばかりだ。
「髭まで生えてきた!!すげー」
「ほんと、もう……みないでっ!!
やめてったら…―――ッ!!!」
あまりのしつこさと不躾にアザミの頭にカッと血が上る。腕を振り解こうとめいいっぱい力を入れたため、指先までも不要な力が入り猫特有の鋭い爪が現れてしまった。
「あぶ…ッ――――」
危ない
アザミがそう発するよりも早く、振り上げてしまった腕は重力と共に、彼女の意志とは関係なく振り下ろされてしまった。
アザミはパッと何かに覆われた気がしたが、振り下ろしてしまった腕の行先は目で追えてしまった。
その様子はまるでスローモーションのようにアザミの目に映る。爪が空気を切り裂く鋭い音を立てたその同時に、プツ…ッと肌に爪が深く突き刺さる。爪は更に食い込みジャッと音を立てて肉を引き裂いた。
包丁で肉の塊を切るような、そんな感覚。しかし自らの爪で肉を裂いだ感覚はより鮮明だった。
「…ぁ…あぁ…ッ…!」
こわい、怖い…!!!
人を傷つけてしまった、怪我をさせてしまった
ものすごく痛かっただろう
血がいっぱい出たはずだ
思い切り引っ掻いてしまったのだから…!!
どうしよう、どうしよう…ッ