第6章 体育祭、それぞれの想い
「さあさあ、位置について……」
13号の合図を、今かと今かと待ちわびる。
「よぉい、……スターーーーート!!!」
障害物競走の始まりだ。
大勢の生徒達は一斉に1つのスタートゲートに向かって走り出す。
「って、始まって早々スタートゲートが狭過ぎる…!入れない!」
アザミは右往左往していると後ろから通形の声がした。
「PO…WERRRRRRRーーーー!!!」
通形は自身の個性“透過”を使い生徒達をあっという間にすり抜けて行った。
「ねぇ、不思議!すっごく混み合ってみんな動けなくなってるの」
そう言いながらスタートゲートの上部の空間を通っていった波動ねじれ。彼女もまたビッグ3といわれる内の1人である。個性の“波動”を利用しアザミや生徒達の頭上を飛んでいく。
スタート地点が、ある程度の生徒を落とす最初のふるいの役割を担っていた。
「!、そうか!みんなの上を通って行けば…!」
しかしアザミの個性の場合、そうなると生徒達を踏みつけて行くことになる。他に良い案がないか悩みかけたその時、背後からピリッとした気配を感じた。
(?!、なんかくるっ?!)
アザミは人間離れした脚力で飛び跳ねると同時に、地面が泥と化し固まった。大勢の生徒達は足を固められ身動きが取れなくなった。
「ってぇー!!何だ動けん!!」
「んのヤロォォ!!」
この障害物競走は計11クラスでの総当たり、コースはスタジアムの外周約4km。雄英高は自由さが売り文句のため、コースさえ守れば何をしたって構わない。
そう、何をしたって。
(私は馬鹿だ…!)
皆、本気でトップを狙っているんだ。
生半可の気持ちで臨んでいない。
「………ごめんっ!!!」
手段なんて選んでられない。既にトップを走る先頭はとうに見えない。駆け上がって蹴落として、なりふり構わず獲りに行くんだ。
「なにィ?!」
「痛っ!!」
「うお?!」
アザミは個性を発動させ、足場が固定されて動けない生徒達の肩や背中を踏み台に颯爽と駆けていく。
「ごめんね!なるべく身体は軽くしてるんだけど…っ!!」
そう、アザミの個性は―――――“猫”。