第6章 体育祭、それぞれの想い
3年K組の控室にて。
アザミは体育着に袖を通し、入場のアナウンスを待っていた。
「クラスの半分も居ないんだなあ」
それもそのはず、経営科は体育祭に出場するメリットが少ない。そのため彼らは売り子や経営戦略シュミレーションを行う。そして今年の目玉は…
(みんな、1年ステージに行っちゃった)
例年ならば、ラストチャンスに懸ける熱と経験値から成る戦略等で3年ステージがメインになる。
しかし、今年に限っては違う。ヴィラン連合の襲撃を受けたにもかかわらず、ほぼ無傷に済んだ1年A組をみんな観たいのだ。
「私もA組、観たかったな」
かっちゃんやデクくんの勇姿を見てみたかった。その気持ちと同時に「私も売り上げだしたりシュミレーションしたりして、経験積んだ方が良かったかな」なんて。この場に及んでも後ろ髪を引かれる。
(ううん、ここまで来たんだ!私のやることは変わらない。)
緊張や後悔を跳ね退けるため、アザミはグッと拳を握る―――
《3年ステージ、生徒の入場だぁ!!》
体育祭全ての司会を勤めるプレゼント・マイクの声がスピーカーから響く。入場行進の合図だ。
暗い通路を歩く。どんどん近づいていく入場口が眩しい。観客の声もだんだん大きくなっていく。入場口をくぐると、そこは……
ワァァァアァァ―――――ッ!!!
会場に収容された12万人の歓声に圧倒される。
3回目の体育祭だというのに、アザミは足が竦みそうになった。
「私だって…」
私だって、負けてられない!
ヒーローを目指す幼馴染達やこんな私を応援してくれる友達に、情けないところは見せられない。
ベストを尽くす
ただそれだけだ
選手宣誓が始まる。
今年の3年主審はスペースヒーロー“13号”だ。そして選手宣誓の生徒代表はやはり通形ミリオだった。
「スポーツマンシップにのっとり正々堂々、ユーモラスな体育祭にします!」
「…遠いなあ」
朝礼台の上で選手宣誓をする通形がこんなにも遠い。自信を無くしそうになるも、自分を鼓舞するアザミ。
(この体育祭が、泣いても笑っても最後なんだ!
絶対に、負けない!)
「選手宣誓も終わったので、早速第一種目に行きましょう!種目は――――!」