第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
でも今、内容をお姉ちゃんに話すのは…!
ハードルが高すぎる…!!
私は必死で何て説明するか考える。
しかし頭の中は何も浮かばず、言えない理由をぐるぐると巡らせるだけであった。
「…将来の夢、みたいな?内容だよ…!」
「ふーん?まあいいわ」
辛うじて言えるのはこれだけなのに、あっさりと引き下がるお姉ちゃんを不思議に思いつつ「助かった」とホッと胸を撫で下ろすのも束の間。
「校長先生がね、素晴らしい作品だから発表か展示の機会を設けるって言ってたから。
その内知れるから、今はいいわ」
コンクールの優勝作品が始業式くらいに決まるらしくて、貴方のがいい線いってるみたいよ?と満足そうに笑うお姉ちゃん。
だ、だから先生達はあえてお姉ちゃんに私の作文を見せないのか…?!変に花を持たせようとしてっ!?
「それって公開処刑じゃ?!!……は…はっ
はっくしょいッ!!!」
話の途中なのに、盛大なくしゃみをしてしまった。ヤバい、鼻水垂れそう。
「やだ、大丈夫??」
「う"〜〜寒い」
「コート着てるとはいえ、そんな薄着で出るからよ」
お姉ちゃんは自分が巻いているモコモコのマフラーを惜しみなく私に巻いてくれた。
「春はもうすぐそこなのに、夜はまだまだ寒いわね」
「お姉ちゃん、寒くないの?」
「全然、寒く………へ、…へくちっ」
お色気いっぱいのお姉ちゃんからはなんとも可愛らしいくしゃみが飛び出した。ちょっと何そのくしゃみ!ずるい、可愛過ぎる!
「…はい、マフラー。はんぶんこしよ?」
「うう、アザミ、ありがと」
いやいや、これはお姉ちゃんのマフラーだからね。
しかしマフラーはんぶんこなんて無理があったな。ロングマフラーだからイケると思ったんだけど…
「何このマフラー」
「やっぱ辞めよっか」
二人でマフラーを巻く姿はまるで二人三脚で縛るのを足ではなく首にした状態だ。お互いピッタリくっついてないと苦しいし、そして隙間が出来ると寒い。
「いいじゃない!このままがいいな。お姉ちゃんは」
「まあ、お姉ちゃんがいいなら良いけど…」
お姉ちゃんがあまりにも嬉しそうなので「まあ、いっか」と、どこぞの恋人達よりもくっついて歩き出した。