第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
お姉ちゃんの気持ちがとっても嬉しいのに、それと同じくらいとっても寂しくなっちゃって。
ずっとこのままでいられたらいいのにって。
私の方こそ、優しいお姉ちゃんに依存して甘えたくなっちゃいそうで、ああ言って誤魔化すことしか出来なかったの。
涙を見せるのも何だか恥ずかしくて、生意気な態度を取ることしか出来なかった。
……意地っ張りな私は。
お姉ちゃんに感謝の気持ちを述べず、ちっぽけなプライドを優先してしまった。
「こうゆうのも青春ねー!」
「はいはい」
いつも通りのお姉ちゃんに戻り、心の中で私は密かに安諸した。
「そう言えば、アザミ」
「なに?」
「冬休みの課題にあった作文?小論文?
貴方、一体何を書いたの?」
「ぐフゥッ!!!」
「何?!その反応は!」
「え、ちょっ…………み、見たの?!!」
「見てないわよ。
私は近代ヒーロー美術史担当だもの。
現代文教師のセメントスが泣いてたわよ?
相澤くんなんて“非合理的だ…”とか言って目頭押さえてたし」
「え…えええ?!」
「13号なんて号泣してたわよ」
貴方、一体何を書いたのよ?と、お姉ちゃんに詰められる。い、言えるわけないじゃない…っ!!
私がヒーローになりたいのは、他の誰でもないお姉ちゃんに憧れたから。お姉ちゃんを支えたいから、なんて。
あわよくば、お姉ちゃんのサイドキックになって。なんなら姉妹でヒーローコンビ組んじゃったりして。……そんな恥ずかしい絵空事みたいな夢を書いた、なんて。
口が裂けても言える訳がなかった。
「ひ…ひみつぅー!」
「えー!言いなさいよ!先生達、私には気を遣って見せてくれないのよ!」
「は?!お姉ちゃん以外の先生達は読んだってこと…?!」
うわああああああ嘘でしょ!!
恥ずか死ぬ!!!
何でバカ正直にあんな事書いたんだろう!?先生達は読むに決まってるじゃんね?!全国コンクールに出す課題でもあったんだから!
…でも、課題とはいえ。
適当なことや手を抜くようなことはせず、しっかり書くと決めていた。
文化祭で爆豪が「やるならガチでやれ」って言ってたのが胸に響いて。本当、何事もやるなら本気でやるべきだよなあって思ったんだよね。