第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
「わ、私に彼氏はまだ早いってこと?!」
「うふふ、見栄なんか張っちゃって!可愛いわねえ」
「私に彼氏なんて出来ないって思ってるんでしょ?!」
「そんなこと思ってないわよ〜〜!ふふっ」
「……絶対に、お姉ちゃんなんかより早く彼氏作るしっ!」
「アザミ、貴方こそ美術の評価最下位にしてあげようかしら?」
「しょ、職権乱用だ…!!」
夜の公園にぎゃいぎゃいと私とお姉ちゃんの声が響く。通行人がひそひそと私達を見て声をひそめていた。
それもそのはず、こんな夜に公園で騒いでいたら近所迷惑だ。私達はハッとこの状況に気づき「帰りましょうか」「そうだね」とそそくさとその場を立ち去った。
「…ふふっ」
「…あは!」
この状況がなんだか可笑しくて、顔を見合わせて吹き出してしまった。お姉ちゃんの口癖じゃないけど…あぁ、なんか青春っぽくていいな、なんて。
「…貴方に彼氏が出来ないなんて、思ってるわけないじゃない」
「あんなに笑ったくせに?」
「それは貴方の反応が面白くてね、ふふっ
貴方はこんなにも可愛い女の子だもの。
…きっとすぐに彼氏が出来ちゃうんでしょうね」
そう言ってお姉ちゃんは私の手をぎゅっと握る。
夜で良かった。
こんな時間に通行人は少ないし、いい大人(私はまだ子どもだけど)の女二人で手を繋いで歩いても暗いため周囲の人は気づかない。
こうやって手を繋いで歩くなんていつぶりだろう。……小学生以来かもしれない。
「お姉ちゃん、さっきはごめんね」
すんなり自然と出てきた謝罪の言葉。
少なからず心配はさせたし、私の発言のせいでお姉ちゃんは良い気分ではなかったはずだ。
「私の方こそ、ごめんなさいね。
アザミの気持ちを汲んであげれなくて…大人気なかったわ」
「へ?!そんな事、ないよ…?!」
まさかお姉ちゃんに謝られるなんて思わなかったため驚いた。
「ねえ、アザミ。
貴方はどうしてヒーローになりたいの?」
お姉ちゃんの突然の質問に話がみえず、言葉が詰まるもとりあえず答える。
「それは……あ、憧れたから」
「私と一緒よ」
「え?」
「確かにお金は稼ぎたかったけど、ヒーローに憧れてヒーローになったのよ。」