第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
いい年した大人のお姉ちゃんにブランコが似合わなさすぎて、違和感がありすぎる。もはや違和感しかない。またもやお姉ちゃんの言動に拍子抜けさせられてしまった。
そんな事でさえ悔しく感じてしまい、私の口先は尖る一方だ。
「…他に行くとこ、ないもん」
「もしかしたら友達や彼氏の家に行くかとも思ったわ」
「…なるほど」
そっか、そういう手もあったのか。
「えぇ?思い付かなかったの?」
単純ねえと笑うお姉ちゃん。
悔しくて、今思いついたことを口にしてみる。
「彼氏のとこ、行けばよかった」
「………彼氏?」
「う、うん」
「……そう、彼氏がいたのね」
「彼氏ぐらい、い、いるよ」
実際は彼氏どころか、好きな異性すらいないのだが。
な、何故だろう。とてつもなく悪い事をしているような気がして仕方ない。
いや、女子高生たるもの彼氏がいてもおかしく無いし、照れくさいが故にそれを家族に内緒にしているなんて皆していることだ。
私からそんな話を聞いたことない(だって彼氏なんて出来たことがない)から、お姉ちゃんは驚いているんだろう。
「お姉ちゃん?」
しかし、それにしてもあまりにもお姉ちゃんの反応がない。どうしたんだろう?とお姉ちゃんの方を振り返る。
「……彼氏って、お姉ちゃん、そんな話聞いてないけど誰かしら?
もしかして轟くん?成績優秀顔良しだけどお家がちょっと大変そうよねそれとも爆豪くん?粗っぽいけど行動の節々に品の良さがあるのよねえ顔も悪くないわそれとも心優しい緑谷くん?普段穏やかだからこそ熱いハートの持ち主っていうギャップも青臭くていいわよねそれともB組の…」
まるで緑谷みたいにブツブツと分析するお姉ちゃん。口元は笑っているが目がぜんっぜん笑ってない…!!その見たことない表情にゾッとした。
やっぱり嘘をつくなんて良くなかったんだ…!!
「ご、ごめん、嘘!彼氏なんていないっ」
「……………………え?」
「彼氏、いないの」
「………あら、いないの?」
「いない、よ」
「………」
「………」
「…………な、
な〜〜んだ!そうなのねえ!」
心底安心したのにか「あ〜良かった!」と胸を撫で下ろすお姉ちゃん。ちょ、ちょっと何?!その満面な笑みは…?!