第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
「あら、どうして?」
「アイツ!私がお姉ちゃんと違って色気がないとか言うの」
「峰田くんったら、女の価値は色気じゃないわよ」
「……私も、お姉ちゃんみたいだったら良かったのに」
「アザミったら、またそんな事言って」
本当、姉妹なのにこんなにも違うものなの?
お姉ちゃんはあんなにキレイなのに、私はせいぜい………。せめて泣きぼくろでもあれば、お姉ちゃんみたいなキレイさとか色気とか少しはあったかなあ。
リビングで不貞寝していると、お姉ちゃんは台所からトコトコ私の所にやって来た。
「わっ」
私の頭を持ち上げ自分の膝の上に置く……所謂膝枕だ。お姉ちゃんのダイナマイトボディが、下から見上げる胸の圧が、凄い。
「あ、お姉ちゃんの膝。気持ちー…」
「花の女子高生が、何オッサンみたいなこと言ってるのよ」
指先の爪まで綺麗なお姉ちゃんの両手が、そっと私の頬を優しく包む。
「アザミ」
あ、この声は。
何か大切な話をする時のトーンだ。
そう察し、私も真面目に「なあに?」と答える。
「アザミ、あなたはとっても素敵な女の子よ」
「……………それは、八百万よりも?」
「え?」
私より八百万の方が素敵な女の子だなんて誰もが分かり切っている事なのに、ちょっと意地悪な返しをしてしまった。
「私は八百万みたいにリーダーの素質もないし、轟みたいな強個性でもない。特別優秀な生徒なわけでもない………そんな私が妹で、
ヒーローであるお姉ちゃんは、恥ずかしくない?」
お姉ちゃんはとても吃驚した顔をしている。そんな顔させてごめんね。でもね、ずーっと心の中でそう思っていたの。
「お姉ちゃんは凄いのに、私は全然……むにっ?!」
「アザミのおバカ」
頬を摘まれ、言葉を発せなくなった。
再びしっかり(乳の先にある)お姉ちゃんの顔を見上げると、ほんの少し悲しそうな顔をしていた。
「アザミはアザミよ。
あなたの代わりは居ない。
雄英のヒーロー科に受かって、一生懸命に頑張っているアザミは私の自慢な妹よ」
それに皆が八百万のようにリーダシップをとれて、轟のように強個性だらけだったら世の中めちゃくちゃだわ!と笑うお姉ちゃん。