第5章 ◆◇短編*ミッドナイト夢 叶わぬ夢◇◆
同じ事の繰り返しの毎日。
他愛もない日常。
それがこんなにも大切で愛しい日々だと気づくのは、いつも失ってから。
大切な日々だと気づかないから「大好き」とか「ありがとう」なんて言わなかったし、言う必要性も感じなかった。
だって明日は必ず訪れるし、いつか言う機会が来るだろうって、当たり前に思っていたから。
「お姉ちゃんと過ごすの、久しぶりだよね」
「えぇ?いつも学校で会ってるじゃない」
「そうだけど!
こんな風にのんびり過ごすの、いつぶりかなあって」
私、香山アザミ。
雄英高校ヒーロー科、1年A組。
そう、私の姉―――香山睡は、あの
18禁ヒーロー “ミッドナイト” だ
「確かにそうよね。やっと春休みに入ったんだもの」
テスト採点と成績付けるの疲れたわ〜と言いながらラフな格好で夕飯を作るお姉ちゃん。
(こんなラフなミッドナイトなんて、みんな見たことないだろうな)
台所に立つお姉ちゃんを横目に、私は手伝いもせずリビングでゲームに勤しんでいた。
…休日の高校生なんてこんなもんでしょ?え、課題?まだ今日の分は終わってないけど、明日もあるし?何なら徹夜でやればいいし?うん、何とかなるなる。
そう言って何やかんや朝になっても終わらなくて、提出するギリギリまで課題をする。休憩時間とか、授業中バレないように。……授業中にバレた時は、マジでヤバいんだけど。
「アザミ、さっきからゲームばっかりしてるけど課題はやったの?」
私の考えを見透かさんばかりのお姉ちゃん。
学校でも家でも口煩いなあと思ってしまう。
……わかってるよ、課題をやらなきゃいけないなんて事。私が1番分かってる。
「……大丈夫ですぅー
ちゃんと計画的に考えてますぅー」
「本当?それならいいけど」
そう、計画的に考えてはいる。
嘘は言ってない。まだやってないだけ。
……これ以上突っ込まれると面倒だ。
「ねえ、それより!
峰田の美術の成績、最下位にしてよ」
お姉ちゃんがそんな事をしないなんて分かっているが、思わず愚痴をこぼしてしまった。