第4章 体育祭、それぞれの準備
* * *
「どないしよ」
「どうしたものかしら、けろ」
「どうしましょう」
「どーしよー?!」
「「「ついて来ちゃったね、猫ちゃん」」」
「にゃあん」
昼休みの後半に差し掛かった頃、1年A組に珍しい来客、猫が来ていた。
その猫を麗日、蛙吹、八百万、芦戸、葉隠、耳郎のクラスの女子全員で囲んでいた。
「やはり餌をあげたのがいけなかったのでしょうか…!」
「いや、この猫さ。ウチらの後をつけるんじゃなくて、ウチらより先に歩いてたよね」
「むしろ先頭歩いてたねー!」
悩む八百万に耳郎が答える。
個性により姿は見えないが制服の手足をバタつかせる葉隠。
女子の騒ぎに何だ何だと男子も集まってきた。
「!、……お前、この間の」
「にゃーん」
「轟くん、この猫ちゃん知っとるん?」
猫は麗日に大人しく抱かれながら轟に返事をするも、するんと腕から逃げ出した。
「あ、お前!この間のは悪かったな!
ちゃんと猫用オヤツ持ってきたんだぜ!食えよ」
「にゃー!」
「約束したもんな!」
猫は「今度こそ待ってました!」と言わんばかりに切島の手からオヤツを貰い一瞬で平らげる。その様子を緑谷は猫の隣にしゃがんで見ていた。
「う〜ん?この猫、どっかで……わっ?!」
「にゃ"ッ?!」
「退けや」
猫と緑谷の悲鳴が同時に上がる。
緑谷を突き飛ばし、猫の首根っこを鷲掴む爆豪が現れた。
「どっかで見覚えあんだわ、この三毛猫」
「か、かっちゃんも?
昨日、屋上で見かけたけど。もっと前に見たことあるような」
「は?テメェも、」
「爆豪君!そんな抱き方では猫も可哀想だろう!!」
「っるせんだよクソメガネ!」
「何騒いでんだお前ら」
「「「「相澤先生!」」」」
まだ午後の授業開始時刻になっていないにも関わらず、現れた1-Aの担任教員に全員が驚く。
「置いてきちまった教材が必要になったから取りに来たんだよ……………て、おい。ソイツ」
彼、相澤消太は猫を見て固まる。
爆豪の手から抜け出そうと藻掻いていた猫も、相澤を見て大人しくなった……と、思った途端、更に逃げ出そうと暴れ出した。
「ゔ、にゃーーーっ」
「あ、先生!この猫ちゃん知って……」
「ますよね?」と、麗日が言葉の続きを発することはなかった。