第4章 体育祭、それぞれの準備
「だからね、応援してる側としては!
応援してる事をデクくんに喜んでもらえたら……嬉しいかなあ」
アザミちゃんは何故か少し照れたような、恥ずかしそうな、はにかみながら言う。
アザミちゃんの笑顔は凄い。
僕の思考も悩みも、全て吹き飛ばしてしまうんだから。そして僕の小さかった自信はアザミちゃんという力強い風に煽られてどんどん大きくなっていく。
嗚呼、やっぱり笑っているアザミちゃんが好きだ。
「デクくん。体育祭、応援してるよ!」
「うん…!!」
君はいつも僕の背中を押してくれるお姉さんで。
僕はどうしても頼りない年下で、弟的存在になってしまう。…でも。
「アザミちゃん」
「ん?」
「ありがとう…!
……か、可愛いじゃなくて!
カッコいいって思ってもらえるように、
――――――が、頑張るよっ」
そう。
君にカッコいいと思ってもらえる、そんなヒーローになるんだ。
「「…」」
何故か生まれてしまった沈黙。
僕は急に恥ずかしくなって「トレーニングしなくっちゃ!」と前屈後屈運動を始めてみたりする。両腕をめいいっぱい伸ばし、身体を大きく仰け反る。
見上げた空は雲一つなく、何処までも青く澄んでいた。
そんな僕とアザミちゃんの間を爽やかな風がサァーっと駆け抜け、校舎周辺の木々をザワザワと鳴らした。
木々のざわめきにアザミちゃんの声が掻き消され、だから僕の耳には届かなかった。
「私も、頑張るよ
……泣いても笑っても、最後の体育祭だから」
体育祭まで、あと2日。