第4章 体育祭、それぞれの準備
「アザミちゃんはさ……
体育祭で自分が1番になれると思う?」
アザミちゃんは一瞬とても驚いた顔をする。
……僕、今、すごく失礼な質問をしたのではないだろうか。
ただ、頑張る理由を聞きたかっただけなのに!!
全身からサァーと血の気が引いた気がした。
「アザミちゃ、ごめ「思わない!
だって3年のヒーロー科には“最もNo.1に近い男”なんて言われてる子がいるんだよ?」
「へ!?そう、なんだ…?!」
僕が心配した事なんて気に留めもせず、むしろ目をキラキラさせその人について熱弁しそうな勢いだ。
知らなかったな、どんな人なんだろう?
僕のヒーローオタク心がムズムズと顔を出しそうになるも抑えた。
「逆に、デクくんは?
体育祭で自分が1位になれると思う?」
「…はは。全然、思えないよ。
全然思えないのにオールマ…あ、ある人から応援、してもらってるのに。全然自信なくって」
「……そっか!でもさ、きっと。
大半の人が皆そんな気持ちなんじゃないかな?」
「そうなの?!」
皆、僕と同じ気持ちなの?!
「いや、わかんないよ?
この広い世界。自分より強い人も、凄い個性も沢山あって。それでも皆ヒーローになりたくて。不安や劣等感を抱えながら、藁をも掴む気持ちで体育祭に挑んでる。
体育祭で…ううん、この世界で勝ち残っていく人は。そうゆう“強い人”なんだろうなって思うんだ」
「…――っ」
その通りだと思った。
僕はオールマイトに見てもらえているから、そうゆう気持ちを見失っていたんだ。
皆、ヒーローになりたいから。
誰かに自分を見てもらいたくて、認めてもらいたくて。だから体育祭で少しでも爪痕を残せるように必死に頑張るんだ。
友の…麗日さんや飯田くんの言葉が蘇る。
『絶対にヒーローになってお金稼いで…父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ』
『兄に憧れヒーローを志した』
『俺はここで1番になってやる!!!』
悔し涙を滲ませながら僕に言い放ったかっちゃんの言葉を。
(バカか…僕は…!)
オールマイトから力をさずかって“無個性”から“有個性“になった。今は力を使えるようにならなければいけないと、その気持ちにばかり囚われていた。
僕に…いや、ヒーローになるために必要な気持ちは。そうゆうモノだったんだ。