第1章 《 》の幼馴染
「そ、そんなぁー!」
貸してもらえる宛が外れ、困るアザミ。
「…貸したる」
「え?」
「だから!貸したるっつってんだバカ」
「ホント?!ありがとう〜助かる〜!」
「テメェには……アザミには、貸しがあるかんな」
「へ?そんなのないよ?」
「…身に覚えがなきゃいーわ、シネ!!」
どーせそう思ってんのは俺だけだ
いつも俺だけなんだ
お前は俺のことなんか、世話を焼く弟分にしか思っちゃいねーだろ
*
『テメェ、雄英受かったんだってな』
『…一応、ね』
『俺も雄英に行く』
『……そっか!頑張ってね!』
『ヒーロー科は何やってんだ。どんな授業してんのか教えろや』
『…私は、経営科だよ?』
『んなこた知っとンだアホ。あと、受かんには何が必要か』
『私のヒーロー科の友達、紹介するよ?』
『テメェに聞いてんだ!!言えやァ!!』
『え、えっとね…っ』
*
「…ちゃん、……かっちゃん!!」
「あ?」
「私の話聞いてる?」
「ンだよ」
「アレは貸しじゃないよ。私だって教えたくてしてたんだから」
覚えてんじゃねーか!!
「かっちゃんに頼って貰えたの、嬉しかったの」
「…そーかよ」
「かっちゃん。体作りとか個性伸ばしとか、してたよね!
私が…と言うか、私の友達のアドバイス通り頑張ったから背が伸びて、体格も良くなったんだよ!
じゃなきゃ、こんな身体付きになる訳ないもん!」
凄い努力家だよ!と、アザミは俺の頑張りを褒め称える。嬉しくない訳がない、が…
(…ッンな事で、嬉しがれるか!!)
俺は至極当然何事でもない風に装おる。
「だからさ!実現したのが嬉しくて!」
「はぁ?何が」
「かっちゃんが中学生の時に約束したじゃん!『一緒に雄英高校の学食を食べよう』って!」
ぽんっ
アザミは背伸びしながら腕を伸ばし、自分より高い所にある俺の頭を撫でた。
「んな…ッ何しやがる!!」
「よく、頑張ったね…!」
目を細めて嬉しそうに笑うアザミに、目を奪われてしまった。