第1章 《 》の幼馴染
雄英高校ヒーロー科、1年A組
―――爆豪勝己
好きな奴―――――幼馴染がいる。
は?デク?
ちげーわ!!もうひとり居やがる。
「あ!かっちゃんだ!」
まだ慣れない雄英高校の広い食堂で、聞き慣れた声が俺のあだ名を呼ぶ。
「ンだよ」
「私もかっちゃんが食べるセットメニュー、食べたくてさ!一緒に並ぼ!」
そう言って幼馴染のコイツ―――アザミは俺と一緒に長蛇の列へ並びはじめた。
(アザミは、何も知らねェ)
同じ制服を着て一緒に居られる嬉しさも、
「ねぇ、かっちゃん」
「あ?」
また近くで名前を呼んでもらえる胸の高鳴りも、
「…デクくん、イジメてないよね?」
「あ"ァ"?!」
なんっっっもわかってねぇーよな、テメェはよォ!!!
「ウゼーんだよ!あのクソデク!!」
何でクソナードの名前が出てくんだよ?!
「えぇ?!まさか入学早々に…っ」
「っせぇーな!!してねーよ!!」
雄英高校に入学早々、いつものやり取りをここでも繰り広げることになろうとは。
「ホッ…そっかそっか!」
「テメェも会えば二言三言目にデクデクデクデク!!うっせぇーんだよ!!」
(いつもデクのことばかり…ッ)
俺を見ろ、なんて
口が裂けても言えない
こうやって俺からのデクいじめが派生する事をアザミは分ってねェ。
「……」
「あ"?」
静かになったと思えば、ジーッと俺を見るアザミ。今度はなンだ?
「かっちゃん!すごい背伸びたよね!!私よりだいぶ大きいなー」
「そんなん、中学ン時に追い越したわボケ」
アザミより背が高くなっても、足が早くなっても―――全てとっくに追い抜いているはずなのに、いつまでも追いつかない。
(年の差のせいだ…コイツが俺よりいつまでも上にいるのは)
「ねぇ!……家庭科の教科書、貸して?」
「…はあ?」
また突拍子もないことをコイツは言い出した。
「いやー…もう必要ないと思ったから…多分、断捨離?しちゃって」
「バッカじゃねぇの」
1学年時のみの教科だが、教科書や資料は卒業するまで取っておくように言われている。
「ね?お願い!!今日の帰りに何か奢るよ!」
「ンなもんいらねーわ」
いつまでも与えられる側の弟分でいたくねェ