第4章 体育祭、それぞれの準備
「だって、アザミってめざといじゃん。
そんな無意味なことしないっしょ」
「内申点稼ぎも欠かさないし」
見透かされてる
アザミは真っ先にそう思った
(そうだよ、私は……)
誰よりもめざとくて、損得感情が強い
だから、3年前の雄英高校入試試験中に。
ヒーローにならないのならば、どこの科に進学すべきか。どうしたら人生の負組にならず、なるべく勝組になれるか。瞬時に考えをめぐらせた。
「まあ、そこがアザミの良いとこで、凄いとこだけど」
「バカっぽいというか、親しみあるのに抜け目ないとことか」
「……ねえ、それ褒めてる??」
「「褒めてる褒めてる」」
「絶対に褒めてないでしょー!!
地味に傷つくからー!!」
わーわーぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる。
アザミはいつもの雰囲気に戻ってよかったと安諸しつつ、心内は穏やかではなかった。
(私らしいって、なんだろう?)
ヒーロー科に進学しなかったこと
経営科に進学したこと
後悔はしていない。
経営科で過ごす日々は勉強に追われてばかりだが、この科だからこそ学べたことが沢山ある。
(だけど…)
雄英高入試日から、ずっと燻った思いがあった。
ヒーローになりたかった想いが、私の中で蕾のまま眠るっているような。食べかけのまま捨ててしまった夢が、消化しきれずにいつまでも残っているような。
そんな気持ち悪さがいつまでも残っているせいで、ダイエットと称してトレーニングしてみたり、個性延ばしをしてみたり。自分らしくない“無意味”なことをしてきた。
あの日から。
自分らしくない毎日を無理やり忙しく過ごしてる。一生懸命目の前のことに忙しく取り組むことでしか、自分を守れないような気がして。
「アザミ、去年は体育祭出なかったのに今年は出るなんて。やっぱ何か策でもあるの?」
「え?」
「だって、アザミは無意味なことしないし」
「過去の体育祭のこと調べたり、自主トレしたりしてたでしょ?ずっと気づいてたよ」
友人ふたりは「「ねー」」と顔を見合わす。
知ってたんだ
私、何も言ってなかったのに
「……確かに、頑張ってきたつもりだけど、無意味になっちゃうかもしれない」
「そーかもね」
友人の冷たい物言いに、アザミの肩はガクッと落ちた。