第4章 体育祭、それぞれの準備
* * *
「アザミは、出し物どーすんの?」
「へ?」
アザミは口に運びかけの、弁当のデザートのさくらんぼを危うく落としそうになった。
夏のような暑い日が続いたと思えば、今日は制服のブレザーを羽織っているくらいが丁度良い。そんな昼下りの雄英高校の昼休み。
アザミは教室でクラスメート2人といつも通り机をくっつけ、お弁当を食べていた。
「自分は飲食の売り子でもすっかなー」
「売るならドリンク系っしょ!
単価安くて利益出やすいし、体育祭は晴れるだろうから売れるとみた」
「私は…売り子は、しない」
雄英高校経営科は、体育祭では売り子や経営戦略等のシュミレーションなどで感を培う場としてる。
何故なら、体育祭に参加するメリットがないからだ。
「そーなの?!アザミが個性使ったらめっちゃ利益出るのに!」
「じゃあ何すんの?体育祭は暇じゃん、経営科は」
そうなのだ。
1年の体育祭の予選ぐらいまではヒーロー科以外の科がなんとか滑り込む事が出来る。
しかし、3年にもなるとヒーロー科の生徒達はプロヒーロー並の実力を持つ。ヒーローになる為の力をつけてきた彼らに、ヒーロー科のための舞台である体育祭で他科の生徒が敵う訳がなかった。
(敵う訳ない、それでも……っ)
アザミは机の下でギュッと拳を密かに握る。
「体育祭、出場してみようと思って……!」
「「え?」」
友人達が心底驚いた顔をする。
「……ほ、ほら!
最後の体育祭だし?記念に出てみようかなーって!」
「出たところで経営科なんて予選落ちっしょ?」
「えっと、経営戦略の為にヒーロー分析もしたいし!スクリーンじゃなくて自分の目で!」
「どうせ体育祭で1位は通形じゃん?
あとはビッグ3の天喰か、波動か」
「…まあ、そうだろうけど、さ」
「結果なんて知れてる」
アザミは顔には出さなかったが、どんどん気持ちが意気消沈していった。
「体育祭出るよりシュミレーションして、運営して利益出した方が良いじゃん?」
「大学入試とか、面接のネタに出来そう」
「まあ、その。そうなんだけど…」
「なんか、アザミらしくないね」
「……え?」
私らしくない、とは。
どのような意味なのだろう。