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【ヒロアカ】みんな誰かのヒーローで

第4章 体育祭、それぞれの準備



『アザミちゃんっ、大丈夫…?!』

『デ、デクくん…っ』





(――――は?)


しかし、俺よりも早くアザミに駆け寄り手を差し出すデク。

デクはアザミのあの姿に怯むことなく、むしろ額を寄せて笑い合う。
俺は何故か二人にこれ以上近づくことができず、その場で棒立ちになるばかりだった。

そうしているうちにアザミはだんだん落ち着き、いつもの彼女の…人の姿に戻っていった。



『デクくんは、もう、私のヒーローだよ!』


思わぬ言葉に聞き間違いじゃないかと、自分の耳を疑った。


(無個性のデクがヒーロー…?)


無個性がヒーローになれる訳無えだろーが!



今すぐ駆け寄って、否定して、馬鹿にして。
早くそうしないと。そうしなければ。

何でも出来る1番スゲー俺の存在が危ぶまれる気がして。しかし、そう思えば思う程、俺は一歩も動くことが出来なかった。

そしてもっと耳を疑う言葉が、俺の胸を抉る。



『じゃ、じゃあ…っ!
泣き虫が治ったら、僕とケッコンしてくれる?』

『いいよ!お嫁さんになってあげるね!』



二人は指切りげんまんと、細くて小さい小指同士を絡ませる。そして絡ませた小指を解き、互いに手を取り合い、夕日に照らされながら仲良く帰っていく。
俺が近くにいることに気づきもしないで。



『…デクの、くせに…ッ』

無個性のくせに…ッッ!!!



俺が最初にアザミを見つけたんだ
俺が最初に助けようとしたんだ

俺が最初に、アザミを好きになったんだ―――








「…クソがぁッ」


余計なことまで思い出してしまった。
…あの出来事からだ。デクを苛めるようになったのは。


「にゃーん」

「まだ居やがったのかよ、お前」


危ねえからどっか行け、と言うと、猫は了承したかのように廃屋の隙間からスッと抜けて行った。


「ここからだ」


俺はここで、雄英高で1番になってやる。
今も昔も何1つやる事は変わらねぇ、奪い取るだけだ。



「――――アザミも、だ」


そう、全て。
完膚なき1位で払拭する。









体育祭まで、あと5日。

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