第4章 体育祭、それぞれの準備
* * *
『かっちゃんスゲー!
4歳で漢字読めるのかよー!』
何で知らねーの?
『かっちゃんが1番かけっこ早ぇ!!』
何で出来ねーの?
『おお〜勝己くんの個性凄いねえ!
ヒーロー向きの派手な個性だ!』
そうか、俺が1番スゲーんだ。
そしてデクが1番スゴくない。
アザミは、―――……。
*
いつだって1位を獲ってきた。
勉強もスポーツも習い事も、個性も。
全てにおいて。
昔も今も何も変わらねぇ。
ここでも1位を奪い取るだけだ。
授業を終えた放課後、演習場USJにてトレーニングをする生徒がひとり。彼もまた体育祭に向け準備をしており、廃屋らしき建物で爆破音を響き渡らせていた。
(調子は悪かねぇ)
彼―――爆豪勝己は個性を使用し爆破を起こしていた。
爆豪の個性は「爆破」で、手のひらからニトロのような液体を出し、それを爆発させる。
その液体の量によって爆発力が違うため、運動した後や気温が高い季節の方が高い爆発力を出すことができる。それらを満たしている今、すこぶる調子が良い。
(ムカつく)
絶好調であるはずなのに、この言い様のない苛つきは何なのか。
(…あの時からだ)
ヘドロ事件。
ヘドロヴィランに襲われた自分を助けようとしたデクを見てから、見透かされてるような……いや、あれはきっかけに過ぎない。
この気持ち悪さは幼い頃からずっと俺に纏わりついている。
「道端の石っころが…!」
調子づいてんじゃねーぞ
昔から勉強もスポーツも全てにおいて、やれば大抵の事は何でも出来る。
「俺の方が上だ…!」
分かり切っている事なのに。
雄英生なった今、デクが活躍するたびに焦燥感に駆られるのは何故だ。
そしてふと気づく。
(は…?
俺がデクに焦りを感じる…??!)
そんな事ある訳がない、あってたまるか
体育祭で完膚なき一位を獲る。
今まで通りトップを獲り続ける、そんだけだ。
そして思考に蓋をした―――その時、
チリリンッ
「!、んだよ……猫か」
「にゃー」
どこからともかく、猫がやってきた。
………猫は好きじゃねえ。
昔のアザミの顔がチラつく。
否、あの出来事を思い出すからだ。