第1章 引退、そして始まり
記憶だけを頼りになんとか十一番隊舎に辿り着いた。
途中何人か変な人に絡まれたけど酔っ払ってたのかな。
まだ執務中なのに。
十一番隊の傷だらけの隊門は昔と変わらず。
「ひゅー、可愛いじゃん。
こんなところに1人でどーしたのー?
変な男にヤられちゃうよ」
壁際に立っていたのもあり、顔の横に両手を置かれて退路を絶たれた。
左側から来ていた為に反応が遅れた。
面倒だな……。
「あの、私用事があるので、そこ退いてください」
「ぎゃはは。
そんなんで、はいそーですかって退けるかよ。
俺のことナメてんの?良いとこのお嬢様ってとこか?」
ニヤニヤとした笑顔のまま顔を近づけて来る。
気持ち悪いし、なんとなく身の危険を感じる。
幸い人通りもないことだし、気絶させても良いかな。
と考え、拳を握った。
「ねぇ、そこに居られると邪魔なんだけど。
あとここで盛られても迷惑だから他所でやってくれないかな。
僕醜いものって嫌いなんだよね」
「あ、綾瀬川五席!これは、その……!」
私に迫っていた男は顔面蒼白になっている。
顔から冷や汗を流し、口を何やらパクパクと動かしている。
綾瀬川五席とは、この男の上官に当たる人なのだろう。
「言い訳なんて醜いことしなくて良いよ」
「す、すいませんでしたっっ」
慌てて私の前から退き、走り去る。
「やれやれ。
ごめんね、野蛮な奴ばっかで。
大丈夫?って言ってもあんまり怯えてなさそうだけど」
「あ、いえ。
助けて頂いてありがとうございます」
目を見てお礼を言う。
「うちに何か用?」
「神咲と言います。
実は少しだけ鍛錬場を貸して貰いたくて……総隊長から話が来てないでしょうか」
「鍛錬場?ちょっと待ってね、隊長に聞いて来る。
あ、そうだ。
ここに居るとさっきみたいに変な奴に絡まれると思うから僕に着いておいで」
綾瀬川さんのあとに続いて十一番隊の隊舎に入る。
この人は私の知る十一番隊っぽさがなくて話しやすい。