第7章 調査
夜も深くなり、阿近の研究室を訪れた。
そろそろ出発の時間になる。義骸を受け取らなければ。
「おう、来たか。ちょうど今出来上がったところだ」
小さく欠伸をしながら話す阿近。
朝来た時よりも机周りに書類が多く溜まっているところを見ると、他の仕事よりも優先してやってくれていたのだろう。
なんだか凄く申し訳ない。
「気ぃつけて行って来いよ」
「うん、ありがとう。
なるべく早く終わらせられるように頑張るね」
「ふっ……あぁ。何かあったらいつでも連絡して来い」
クシャクシャと髪を撫でてくれる阿近の手は優しい。
暫く会えなくなるなんて寂しいなぁ。
早く終わらせて帰って来たいけど仕事の手は抜けない。
睡眠時間削って夜も調査しよう。
そう心に決めて、阿近の研究室を出た。
*****
穿界門を開いて貰い、地獄蝶を1匹付けるとそのまま進んで行く。
現世なんてかなり久しぶりだなぁ。
あの頃とどのぐらい変わっているのだろうか。
現世に着き、早速義骸に着替えた。
本来ならば義骸は長期任務や霊力を回復させる為に使うのだけど、今回は特例らしい。
この場所は霊圧の高い人間が多く存在するそうで、その人達に見られても問題ないようにらしい。
限定霊印も打って霊圧を制限しているけど、いつもと同じように霊圧を消して歩いていく。
「確かに霊圧の高い人間が多い……」
意識しなくても感じる一般人よりも高い霊圧。
この霊圧に誘き寄せられて虚の出現率が高くなっているのではないか?
しかしそれと魂葬ミスはどう説明する。
どう繋がっているのか全く分からない。
歩きながら調査を進めていると、いつの間にか朝日が登っていた。
もうそんなに時間が経ってしまったのね。
そう毎回ミスが起こる訳でもないし、調査は難航しそう。
弱気になった気持ちを切り替えようと小さく息を吐き出すと、かなり強い霊圧を感じて物陰に身を隠した。
「……これが一般人?隊長格ぐらいの霊圧はあるでしょ」
朝の登校途中なのか、制服を来た男女数名が歩いている。
皆霊圧が高いけど、その中に一際高い霊圧を放つ人が1人。
橙色の髪をした男の子の霊圧が群を抜いて高かった。
彼は一体何者なのだろうか。