第7章 調査
「実はね、織羽にお願いがあって来たの」
私の前に立っているのは、あの頃から何も風貌の変わっていないかつての副官だ。
山田織羽。
草鹿副隊長が就任するまでの、護廷十三隊の最年少副官記録を持っていた人。
「僕に出来ることでしたら」
「私の隊に副官として戻って来て欲しいの」
「っ……」
「すぐに結論を出せとは言わない。
今私が隊長をしている隊の概要を纏めて来たわ、良かったら目を通してくれないかな?
その資料の末尾に私の伝令神機の番号が書いてある。
もし引き受けてくれるのなら連絡欲しいです」
そう早口で説明すると、織羽は資料を受け取ったまま顔を俯かせてしまった。
髪で隠れてよく表情が見えない。
いきなり来て捲し立てるように話し続けられたら誰だって不快に思うだろう。
少し申し訳ないことをしたかな。
「急に来てごめんね。
任務で暫く隊を離れるから、任せられる人を早く見つけなきゃって焦っちゃった。
別に断ったからといってあなたに何かしたりはしないわ、約束する。
ただ前向きに考えてくれると嬉しいな。
じゃあね、話聞いてくれてありがとう」
またしても捲し立てるようにバーッと話し続けてしまった。
緊張するとそれを誤魔化すように、頭の中にある言葉をそのまま言ってしまうのが私の悪い癖。
ちゃんと伝わる言葉になっていたかな?
「っ、あの、千早様……!」
「うん?」
「千早様は今、幸せですか?毎日が楽しいですか?」
「うん。仕事は忙しいし大変だけど、凄く楽しい!」
「……そうですか、それは何よりです。
あの、副官の件、お引き受けしますと山本総隊長にお伝えください」
「え!良いの!?」
まさかこの場ですぐに返答が貰えるとは思っていなかった。
「はい。また千早様の下で働けるのに、拒否する理由なんてありません。
よろしくお願い致します」
「ありがとう!織羽!
こちらこそ、よろしくお願いします。
詳細や着任は私の任務後になっちゃうかもだけど、大丈夫?」
「はい。問題ないです。
任務行ってらっしゃいませ、どうかご無事で」
話が思っていたよりもスムーズに進み、驚きを隠せない。
そのまま総隊長に事を伝え、副官の件は山田織羽の復帰で動いて貰っている。