第6章 寝不足の罠
「千早……出すぞ」
「んっ、あっ、きて、沢山出して?」
「馬鹿。それは反則だ」
何度か強く突き上げると、私の腰を持ち上げて白濁の液を吐き出した阿近自身。
生暖かい液体が顔を、死覇装を汚す。
「いっぱい出たね」
「言い方。流石にナカに出す訳にはいかねぇからな」
「阿近って何気にしっかりしてるよね」
「いや、常識だろ」
「死覇装汚れちゃったから変えないと」
「黒に白ってのも良いな、映えて」
「もう!そんなに替えがある訳じゃないから次からは気をつけてね?」
そう怒っても阿近は小さく笑うだけ。
これは今後も繰り返しそうだな……と密かに溜め息を零す。
「まぁ、この部屋に替えはあるからそれ使えば良いだろ」
「……元カノ……?」
「阿呆。
何かあった用の予備だ、義骸造る時にたまに使うんだよ。
流石に隊長羽織はねぇが」
「あ、そっか、良かった。
羽織は汚れてないから大丈夫よ、じゃあその替え借りても良いかな?」
「あぁ」
シャワーを借り、身体を綺麗にすると予備の死覇装に袖を通した。
うん、サイズも問題なさそうだ。
鬼道で濡れた髪を乾かし、阿近の元へ戻ると何やら煙草を咥えながら眉間に皺を寄せていた。
何かあったのかな。
「おう。戻ったか」
「あ、うん。何かあったの?」
「あー……急ぎの仕事が入った」
「え、そうなの?ごめんね、こんなに長々とお邪魔しちゃって!」
バタバタと慌てて衣服や荷物を纏める。
元々手ぶら同然で来ていたから帰り支度をするのに時間は掛からなかった。
羽織を着て阿近に背を向けたタイミングで腕を引かれた。
引っ張られたと認識するよりも前に私の身体は阿近の腕の中に居て、トクトクと規則正しい心音が死覇装越しに伝わって来る。
「……帰したくねぇ」
「それは狡い」
「あ?」
「仕事したくなくなっちゃう」
「しなきゃ良いだろ。ここに居ろよ」
「そういう訳にはいかないの!知ってるでしょ?」
「まぁな。言ってみただけだ」
少し困ったように眉を下げる阿近に、申し訳なくなる。
阿近にそんな顔させたくない。
今日程仕事をしたくないと思った日はない。