第6章 寝不足の罠
「フラフラだな。寝てねぇだろ」
「あれ、阿近?こんなところに居るなんて珍しいね」
「こんなところって、ここはうちの隊舎だ。
お前がここに居る方が珍しいだろ」
「あ、そうなんだ」
ボーッと歩いている内にどうやら十二番隊の敷地内に入ってしまったらしい。
縁側で煙草を吸っていた阿近が居た。
「ここのところ来てなかったが、仕事忙しいのか?」
「うん、まぁね。でももう少しで一段落出来そう」
「へぇ。お疲れ様。1本要るか?」
「ううん、要らない」
「寝てなさそうな顔色してんな。まだ時間あるなら仮眠してくか?あったけぇぞ」
「じゃあお邪魔しようかな」
「おう」
縁側に腰を下ろすと、ポカポカとした陽気が眠気を誘う。
ココ最近まともに寝てなかったからか、あっという間に睡魔がやって来る。
「1時間経ったら起こしてやるから寝てろ」
身体を引かれて、阿近の膝の上に頭を乗せる形になる。
重くないかな。
阿近は仕事大丈夫なのかな。
そんな疑問はすぐに眠気で掻き消されていく。
肩に何か掛かる感覚がして、阿近の匂いが濃くなったところを見るときっと白衣を掛けてくれたのだろう。
確認したくても瞼が開かない。
抗うことの出来ない強い眠気に、今の私には勝つ術はなかった。
*****
「ん……」
少し肌寒くなって目が覚めた。
私の頭の下には、寝る前と変わらず阿近の膝がある。
どのぐらい寝てたのかな。
やけに頭がすっきりしている気がする。
寝過ぎてしまって阿近に迷惑を掛けてはいないだろうか。
「起きたか」
「ごめん、阿近。結構寝ちゃってた。重かったよね」
「別に。そんなにヤワじゃねぇ。
少し冷えるようになって来たな。中に入るか」
身体に掛けられていた白衣を阿近に返し、ボーッとする頭で阿近の後ろを着いて行く。
一瞬スッキリしたと思ったけど、やっぱりまだ眠たい。
「時間あるならまだ寝るか?今なら診察台が空いてる」
「んんん……おきる」
「そんな眠そうな声で言われても説得力ねぇぞ」
「まだ、やること、ある」
「そんな声で言われてもな」
「副官探さなきゃ休めない。涅隊長が造ってくれるかもって言ってた」