第5章 何でも屋
「ねぇ、京楽さん。聞きたいことがあるんだけど」
「ん?どしたの?改まって」
「京楽さんって経験豊富だよね」
「んんー!?ちょ、ちょっと待って千早ちゃん。それってどういう意味かな?
しかもなんで確定系?」
「えっと、女性経験って意味で。普段の振る舞いとかでなんとなくそうかなって」
そう尋ねると、浮竹さんが肩を震わせて笑っていた。
京楽さんは口をあんぐりと開けてフリーズしている。
何か言い方間違ったかな。
「どこから聞いたのそれ」
「歳上ってどこまでが許容範囲かな?」
「えっ、何、千早ちゃん好きな子居るの!?」
「おい、京楽」
「……うん。でも歳下の子だから私のことなんてきっと眼中に無いと思う」
「そんなことはないさ。人を好きになるのに年齢なんて関係ないよ」
「きょ、京楽さんは歳上平気?」
机に身体を乗り出して、京楽さんとの距離を詰める。
本当に年齢なんて関係ないのかな。
やっぱり男の人は自分より若くて可愛い子が好きなんじゃないだろうか。
「若くて可愛い女の子の方が好きでしょ?ピチピチの」
「こら、僕のことをなんだと思ってるの。
それと女の子がピチピチとか言わない。
そりゃ人によってはそういう人も居るとは思うけど、僕は年齢を気にしたことはないよ」
「そうかなぁ……オバサンだと思われてないかな?
お母さん的なポジショニングだったらどうしよう」
「その子どのぐらい歳下なの?」
「うーん……詳しい年齢は知らないけど、京楽さんと朽木隊長ぐらい?
もっと下かな……檜佐木副隊長ぐらいかな。
檜佐木副隊長は恋愛対象に入る?」
そう問えばまた浮竹さんが肩を揺らして笑う。
京楽さんは目をパチクリさせて固まっている。
あれ、この光景さっきも見た気がする。
「んんん、檜佐木くんは悪いけど恋愛対象ではないかな。
ほら彼男の子だし」
「千早、こっちへおいで。
ちょっと酔いを覚まそうか、水飲めるか?」
浮竹さんが注文してくれた冷水をゆっくりと飲み込めば、喉を通る冷たさに頭の中の熱が少しだけ引いていく感覚がした。
「あ、違う、逆だ。歳下を言っちゃ意味がないんだった。
烈さんは恋愛対象に入る?」
その瞬間、空気が一瞬止まった気がした。