第5章 何でも屋
「難しいことを聞くね……どう答えても卯ノ花隊長に失礼な回答になっちゃいそうだからあんまり言いたくはないんだけど……」
「やっぱり年齢……」
「千早、それを言うと卯ノ花隊長に失礼だろう?」
「ごめんなさい」
「じゃあ逆に聞くけど、千早ちゃんにとって僕達は恋愛対象に入るのかい?」
「京楽、それ俺も巻き込み事故喰らわないか?」
水の入ったコップを置いて、暫く考える。
私が2人と恋愛……。
どう考えてもイメージが沸かない。想像つかない。
「……ごめんなさい。2人のことはお兄ちゃん的な存在としか思えなくて。
2人共素敵な人だと思うけど、なんていうか恋愛とはまた違うような……」
「うん、それで良いんだよ。
相手をどう感じるかなんでその人次第なんだから。
年齢なんてのは二の次、三の次ぐらいでしかない。
だからそこまで千早ちゃんが気に病むことじゃないんだよ」
「ありがとう。頑張ってみる!」
「うん。気になるから何か進展あったら教えてね〜」
料亭で結構話し込んでいたらしく、気が付くと日付が変わろうとしていた。
明日もあるしそろそろお開きにしようと京楽さんが言い、お会計をしようとお財布を取り出せば今回は良いからと2人に言われた。
「そういう訳にも……」
「良いの良いの。今日は僕が誘ったんだし、奢らせて」
「でも……」
「京楽もああ言ってるし、ここは俺達の顔を立てると思って。な?」
「ありがとう、ご馳走様でした」
なんやかんやで結構飲んでしまったので流石に申し訳なかったけど、浮竹さんに言われてしまっては折れるしかない。
個室のあるお店だしそこそこ値段がするだろう。
これはきちんと仕事で恩を返さねば。
そう静かに心の中で決めた。
「もう遅いし送るよ」
「え!そんな!1人で帰れるよ」
「夜道は危険なの。千早ちゃんにもしものことがあったら困るし。ね?お願い」
「そうだぞ、近頃は物騒だからな」
2人の言葉に甘えて私室まで送って貰い、軽くシャワーを浴びると床に着いた。
阿近も今頃寝る準備をしているのかな。
それとも今日も徹夜で研究をしてるのかな。
目を離すと休憩を忘れる阿近を心配していると、ふと今日の京楽さんの様子が思い浮かんだ。
あの時の京楽さんも同じ気持ちだったのかな。