第5章 何でも屋
「僕ちょっと興味あるんだよね、千早ちゃんが男を殺すところ。
どんな感じかなって」
ニッコリ笑う。
その顔は非常に楽しそうで、何やらワクワクしてそうとも取れる表情だ。
「ということ今日は暇な男の子連れて飲みに行こう!
思う存分殺しちゃおう」
「だから殺さないってば」
「じゃあ仕事終わったら迎えに行くね〜」
「分かった。殺さないけどね!」
京楽さんと飲みに行く約束をして、執務室から出る頃にはお昼を少し過ぎていた。
書類仕事のことしか頭になくて、死神代行組について聞くのをすっかり忘れてしまっていた。
まぁ、会えば分かるかな。
*****
隊舎に戻り、残りの書類を仕上げて行く。
隊員の募集は総隊長を始めとする各隊の隊長が、自隊から何名か選出してくれるらしい。
もちろん強制ではないから異動するのも、残るのも個人の自由だ。
新しい隊はまだまだ謎が多いし、何人集まるかな。
各隊の書類を請け負うから少なくとも他の隊と同じぐらいの隊員は欲しい。
なんてのはちょっと高望みかな。
「今暇か?」
「阿近!珍しいね、あなたが出歩いてるなんて」
「俺のことを一体なんだと……書類届けに来たんだよ」
「阿近もそんなことするんだ」
「普段は他の奴の仕事だが今皆出払ってんだよ、局長の研究に同行してて」
「なるほど」
「まぁ俺が届けるのは千早のところだけだがな」
阿近の言葉に胸がドクンと高鳴る。
そういう嬉しいことをさらって言えるのは、私のことを意識してないからだろうか。
って意識する訳ないよね。
阿近と私では一回り以上も歳が離れている。
「……仕事忙しいのか?」
「え?う、ううん!別にそこまでじゃないよ」
「なんか元気がねぇ」
「そんなことないよ!大丈夫!」
「……頼りないかも知れねぇが、何かあったら言えよ」
ポンと阿近の手が私の頭の上に乗る。
その体温に涙が出そうになるのは、私がこの恋を諦めているからだろうか。
「ありがと、阿近。
阿近も無理しないでね?ちゃんと食べて、ちゃんと寝るのよ?
皆を補佐する十四番隊だから、何かあったら遠慮なく言うこと!良い?」
「相変わらずお節介」
クツクツと喉で笑うと、阿近は手を挙げて執務室を出て行った。