第5章 何でも屋
「机お借りしても良いですか?」
「え?あ、どうぞ」
「ありがとうございます。
書類は私と京楽さんでやりますので、伊勢副隊長は出来上がった書類を日付けや種類ごとに分けて頂けますか?」
「え!良いんですか?神咲隊長もお忙しいのに……」
「もちろんです。各隊を補佐するのが私の役目ですから」
「ありがとうございます!神咲隊長」
伊勢副隊長の机を借り、期限の近い書類を片っ端から仕上げていく。
机の上には収まらず、床にまで散乱していた書類は時間を追うごとに減っていったと思う。
我ながら集中すると時間を忘れてしまうのが悪い癖だと思う。
「そろそろ休憩にしませんか?」
コトリと目の前に湯呑みが置かれた。
湯気がユラユラとたっていて、すぐに煎れたてだと分かる。
温かいお茶は疲れた身体と心を解してくれる。
「ありがとうございます、伊勢副隊長」
「京楽隊長も、一旦休憩なさってはいかがですか?」
「ん?ありがと、七緒ちゃん。
わ〜、僕の分のお茶も煎れてくれたの〜?」
「京楽隊長、やれば出来るんですから普段から仕事なさってくださいよ。
普段からコツコツやっていれば今日みたいに大量に溜まったりしないんですから」
「えー……」
「神咲隊長、本日はありがとうございました。
大分減りました、あとは隊長がなんとか片付けますから」
「いえ、お力添え出来たのなら良かったです」
「ねー、千早ちゃん。今夜飲みに行かないかい?」
「京楽さんと?」
「別に2人きりって訳じゃないよ。誰か一緒に飲みたい人居る?
僕的には2人でも良いんだけどさ、ほら今何かと煩いじゃない」
飲みたい人と言われてパッと顔が思い浮かぶのは阿近。
でも、阿近は人と絡むの苦手そう。
「京楽さんは普段はどんな人と飲んでるの?」
「んー、そうだね。
浮竹と月見酒したり、飲み屋に行く時は松本ちゃんと飲む時が多いかな」
「乱菊副隊長と?」
「そうそう。
それで昨日飲みに言った時、酔った千早ちゃんは男殺しだって言ってたよ」
「男殺し?」
なんて物騒な言葉だ。
乱菊副隊長の前でそんな物騒なことしたかな?
思い当たる節が見当たらず、首を傾げる。