第5章 何でも屋
困って阿近に助けを求めれば、目を逸らされた。
えっ、諦めろってこと!?
私を見捨てるの?まぁ直属の上司だし仕方ない……か?
「……痛覚はあるんですか?」
「あぁ、感覚は全て普通にあるヨ。
肉体は改造しているがネ」
「そう……」
痛覚があるとなると、下手に手は出せない。
こんなことで痛い思いをさせたくはないし、かと言って実験に付き合う気もない。
初日に毒を盛られてるし、この人に関してはハッキリ言ってまだ信用してない。
何をされるか分からない。
「さぁ、大人しくワタシの実験に付き合い給えヨ」
「拒否します」
「ネム、早く被検体を連れて行くのだヨ」
「被検体!?」
「君の経歴は知っているヨ。
元三番隊の隊長をしていたんだろう?
被検体に相応しい素材だ、いやむしろ被検体以外にない!」
「散々な言われようですね……」
「千早、諦めろ」
阿近が近づき、耳元で言う。
「……分かりました、協力します。
でも実験の内容は教えてくださいね」
「素人の君に言って理解出来ると言うのかネ?バカバカしい」
「いや、分かりますよ。
現に俺の研究もアシストしてましたしね」
「ほぅ……」
興味深そうに見つめる。
「そんなことより、私定時過ぎたので上がりますね」
「なっ、いつの間にネムの腕から抜け出したのかネ!?
さっきの協力する言葉は嘘かネ!?」
涅副隊長の腕の中には、何枚の紙切れ。
「はい、虚偽です。
これはちょっとした技で。じゃあ定時になったので失礼します」
夜一さんから教わった術を、まさかここで使うとは思わなかった。
呆気に取られる涅隊長をよそに、研究室を去った。
その後の阿近は大変だったかも知れないけど、1度見捨てられたんだからそのぐらいは苦労して貰わないと!
阿近なら助けてくれると思ったのに。