第5章 何でも屋
四番隊隊舎に行けば、烈さんと総隊長が揃って並んでいた。
その目の前にはベッドに横たわり、酸素吸引器をつける女の子が1人。
色々な管が繋がれた細い腕は凄く痛々しい。
「千早、彼女が五番隊副隊長の雛森桃さんです。
愛染の謀反の時、刀で身体を貫かれ、最善を尽くしたのですが未だに意識が戻りません。
あなたの力を貸して頂けませんか」
「分かりました」
機械に繋がれて静かに眠る雛森副隊長の姿は見ていてとても痛々しい。
ピッピッという機械の規則正しい音がやけに大きく響く。
「染まれ、加蜜列(カミツレ)」
抜刀し、斬魄刀を解放する。
解放すると刀身は白く変色し、長さも15センチ足らずまで小さくなる。
黄色の柄と白い刀身が加蜜列の花のようにも見える。
この白い刀身を雛森副隊長の中心、臍に当たる部分に深く突き立てた。
次第に林檎のような香りが強まっていき、刀身が徐々に黒く染まっていく。
私の斬魄刀は鬼道系に属する斬魄刀である。
その始解の能力は治癒系のものが殆どであり、戦闘には向かない。
刺した対象を蝕んでいるものを刀が吸収し、浄化する。
もちろん外傷を治すことも出来るけど、それは私でなくても出来ることであるのでそこは烈さんに任せてしまっている。
「ふぅ……私に出来ることはしました。傷はほとんど癒えたでしょう」
心の傷は私にはどうすることも出来ないけど。
「うむ、ご苦労じゃったの。今日はもう上がって良いぞ」
「ええ、そうします」
この加蜜列は尸魂界に置ける、取り扱い注意の斬魄刀に指定されてしまっている。
この刀は人の命を救うだけではなく、他者の命を奪うことも簡単に出来てしまう程の力を持つ斬魄刀であるからだ。
その為始解、卍解が出来る状況には制限が課せられている。
誤った使用方法や精神状態で加蜜列を使ってしまえば、持ち主の命すらも奪ってしまう可能性を持ち得ている。