第5章 何でも屋
「稽古、出来ないんすか?負けるのが怖いんすか?」
ゲラゲラと下品な笑い方をした。
なんでこう、十一番隊ってこういう人ばかりなのかな……。
まぁ今の若い隊士達とは一緒に働いてないから私のことを知らない人がほとんどなんだけど、こう直球にぶつけて来る感じが十一番隊らしい。
小さな溜め息のあと、男の目を見据えて言った。
「良いですよ、少しだけお付き合いします。
ただし、時間もないので全員同時にお相手しますね」
近くに転がっていた木刀を構える。
男達は顔を見合わせたあと、形相を変え、一斉に襲いかかって来た。
私は攻撃をすることなく、剣を受け流し、相手を次々に弾き飛ばす。
「はい、終わり」
早々に終わらせると、元居た席に戻った。
「お疲れ様。
何度もすまないね、うちの馬鹿達が。
皆血の気が多くて学習能力がない奴らばかりなんだ」
「いえ、これもまだ馴染めていない証拠だと受け取ってますよ」
「そう言って貰えると助かる。
多分まだ何回か今みたいに突っかかって来る連中居ると思うけど、遠慮せずやっちゃって良いから」
「はい、そのつもりです」
黙々と仕事をしていると、ふと目の前に湯呑みが置かれた。
「ありがとうございます」
「それはこっちのセリフ。書類手伝ってくれてありがとう。
君のお陰で大分捗ったよ、やっぱり1人じゃないとはやいね」
「綾瀬川さんは優しいんですね」
お茶を口に運べば、ほんのりと甘かった。
この甘みが疲れた心に染みる。
「弓親で良いよ、長いし言いにくいでしょ」
「じゃあお言葉に甘えて……」
弓親さんと話をしていると、1匹の地獄蝶が舞い込んで来た。
それを指に止めると、内容が通達された。
“ 十四番隊神咲千早、至急四番隊隊舎まで来られたし。
繰り返す……”
「あ、呼び出しみたいだね」
「ええ。恐らく療養中の雛森副隊長の治療ですかね」
「治療?そんなものまでやるの?結構やること多いんだね」
「私の斬魄刀の能力なんです。見に来ます?」
「いや、やめておくよ。
僕はまだ書類があるからね、行ってらっしゃい。
今日はありがと、助かった!」